だって特別。
父娘喧嘩はお静かに。
「なぁんで帰って来るアルかぁぁぁああぁぁあ!!!この天パーマダオォォォオオオォオ!!!」
「馬鹿かぁあぁ!!此処は俺の家じゃああぁぁあ!!!帰って来るに決ってんだろうがぁ!!!胃拡張酢昆布娘ぇえぇぇええぇぇえ!!!」
はい、本日も万事屋こと、坂田さん家では騒がしい・・・ぶっちゃけ近所迷惑な怒鳴り声が響いております。
時間はもうじき夕暮れになろうかと言う頃。
さてさて、それはさて置き、二人の言い争いが益々ヒートアップしておりますので皆様も耳を傾けては如何でしょう?
下らない事山の如しですがね。
「飲むなら朝まで飲んでくれば良いアル!!そしたら私、新八に甘え放題ネ!!昨日だって一緒に寝てたのに、銀ちゃん帰って来やがるから銀ちゃんの世話しに行っちゃったヨ!!」
「帰って来やがりましたが何か!?ってか、オメェ自分の寝床あんだから其処で寝りゃあいいだろうが!!夫婦の聖域に入って来るんじゃありません!!」
「私がいなかったら銀ちゃん確実に新八襲ってたネ!!猫の発情期以上に迷惑ヨ!!!」
「はい、ばーか!!人間は一年中発情期ですぅ!!春だけじゃねぇんだよ!!舐めんなコノヤロー!!!」
「最低ヨ!!銀ちゃん不潔ネ!!新八の身体をちょっとは労わるヨロシ!!三十路の癖に絶倫なんてキモイヨ!!近寄らないで!!」
「三十路じゃねぇ!!銀さんまだ二十代ですぅ!!ってか、お前全国の三十路で絶倫な方に謝れ!!男はヤる時にヤんなきゃ駄目なんだよ!!!」
「最低最悪アルこのマダオ!!十代の乙女に向かってなんて事言うアルか!!」
「襲うとか発情期とか絶倫とか平然と口にしてた癖に今更乙女ぶんなコラァァアアァア!!」
本当に下らないですね。
二人の言い争いの理由はこんな感じだ。
銀時が飲みに出ると、まだ幼い少女の神楽を一人にする訳にはいかないと新八が万事屋に泊まる。
とは言っても、万事屋の財布事情からそう多いとは言えない。
普段はある程度の時間になれば家に帰ってしまう新八。
正直な事を言ってしまえば、毎日でも飲み歩いてしまえと言うのが神楽の本音だ。
そうすれば、新八が家に帰る事は無い。
まぁ、それは横に置いておくとして。
その場合、神楽は三回に一回の割合で新八に一緒に寝ようとおねだりをする。
最初は勿論、年の近い男女が一緒に寝るのはどうだろうかと断っていた新八だったが、寂しそうにする神楽に折れてそのおねだりを聞いてやるようになった。
何だか今更な気がしたせいもある。
その場合、神楽は自分の布団を持っては来ずに、新八の布団に一緒に潜り込むのが常であった。
ぴったりと新八に引っ付いて眠るのは心地良く、何よりも、時折訪れる悪夢すら跳ね返してくれる安心がある。
そうやって朝まで心地良い眠りに着いていたのだが・・・。
己が居ない間にそのような事があったと知った銀時は、それまでは飲みに出れば朝帰りが当然だったのだが、日付を越えて暫くすれば帰って来るようになった。
つまり・・・。
神楽に新八を独り占めさせてなるものか!!!!!
と言う、激しく大人気ない嫉妬の為である。
そして現在。
新八が買出しに出たのを境に、朝から互いに燻らせていた怒りをぶつけ合っているのだ。
実はこれ。
今回が初めてと言う訳ではなく、まぁ、銀時が飲みに行く度に起こる事だ。
ご近所迷惑極まりない言い合いは、ご近所さんでは有名で・・・。
あぁ・・・坂田さん家の旦那さん、また昨日飲みに行ってたんだ・・・。
と、筒抜けになる訳です。
そして・・・。
坂田さん家の奥さん・お母さんは、毎日大変だねぇ・・・。
と、思われる訳で・・・。
買出しが終わり帰り道を急ぐ新八が、ご近所さんから何だか優しい目で見られて首を捻りながら帰ってくる事になるのです。
奥さん・マミィを困らせない為に。
坂田さん家の旦那さんと娘さん。
父娘喧嘩はもう少しお静かに。
「飲みに行ったら朝まで帰って来んなぁぁぁぁぁあぁああぁぁあ!!!!!」
「標準語でしゃべんじゃねぇええぇぇぇぇえ!!!!!」
まぁ、無理でしょうけどね・・・。
