自分で覚えてない過去を人に話されるととんでもなく恥ずかしいよねって話。 前編










坂田さん家は月に何度か、旦那様と長男の二人きりになる夜がある。
実家に帰らせて頂きます的なアレですか?と思った其処の貴方。
そんな事になったら、坂田さん家に残るのは間違いなく旦那だけです。
それは置いておくとして・・・現在志村家に住むのは新八の姉夫婦とその子供だ。
しかし、旦那が月に何度か仕事の都合で夜に家を空ける事がある為、念の為に新八は蓮華を連れて実家に戻る事にしている。

妙に犯罪(殺人)を犯させない為に。

兎にも角にも・・・今夜はそんな夜だった事を前提に話を進めようと思います。アレ?作文?










「親父、風呂ー」



ほこほこと湯気を纏いながら風呂から出て来た閃時は、なみなみと水の注がれたコップ片手にまだ濡れている髪を首に掛けたタオルで拭きながら、だらしなくソファに寝転がってテレビを点けたままうつらうつらとしている銀時に声を掛けた。
まだ意識は完全に落ちて無いのか、銀時はあーっと気だるげに声を上げる。



「早く入らねぇと湯が冷めんぜ」
「おー・・・って、コラ。父ちゃんを踏むんじゃありません」



後一人しか入らないのに追い炊きするのは勿体無いと、起き上がる気のまったく見えない銀時を急かす為に、横向きで寝転がっている事で上になっていた左腰骨の辺りを踏み付けて軽く身体を揺らす。
踏み付ける足を捕まえに来た手からひょいと逃げると、閃時は向かい側のソファに腰を下ろした。
テーブルに置かれていたリモコンを取って適当にチャンネルを変えたが、最終的には最初の番組に戻してリモコンを手放す。
その代わりに、風呂の後の水分補給とばかりにゴクゴクと喉を鳴らし用意して来た水を流し込んだ。
テレビから聞こえるワザとらしい笑い声にソファが軋む音と伸びをした時に反射的に零れる唸り声が混じった事に、閃時はチラリと向かい側に視線を向ける。



「ちっと飲みに行って来るわー」



やっと風呂に入る気になったのかと思えば、そんな言葉を投げられて閃時は肺の中を空にする勢いで深々と溜息を吐いた。



「・・・酔い潰れても迎えには行かねぇぞ」
「あんでよ?母ちゃんもいねぇってのによー。父ちゃんが凍死したらどうすんだコラ」
「酔い潰れて道端に転がる事前提で飲みに出るんじゃねぇよボケ。ってか、今日は電話鳴っても起きねぇよ多分」
「そんな眠いのか?」
「眠いのもあるけど、疲れてる。朝六時に起きて、八時から夕方の五時まで九兵衛さんとこで稽古させて貰ってたから」



朝まで爆睡コースだよコレと、まだ九時も回らない時間であるのにも係わらず閃時はふぁっと大きな欠伸を一つ零して、生理的な涙の滲んだ目をしょぼつかせた。
月に何度か、閃時は柳生の道場に出向く。恒道館での稽古だけだと中々相掛かり稽古が出来ない為だ。
その理由は、門下生が全員閃時よりも年下である事と、家庭環境やら遺伝やらで平均を軽く飛び越える怪力を持っている事で、門下生との相掛かり稽古禁止令を下されているからである。
新八から稽古はつけて貰っているが、それは門下生の稽古の無い日だけと限定されていた。
道場の隅から隅まで使用するような打ち合いになるので、門下生が居ると非常に危険なのだ。
そう言った諸々の理由により、柳生の道場でも鍛錬を積んでいる。
その、月に何度かある稽古が偶々今日だったらしい。



「凍死覚悟で行くなら止めねぇけど?」



どうすっかなぁーと頭を掻く銀時に閃時がニヤリと笑って言い放てば、ホント可愛くねぇー!!っと銀時が叫んだ。
拳骨が飛んで来る前にソファから立ち上がった閃時は、使用済みのコップを片付けに台所に向かう。
ざっと洗い流して籠に引っ繰り返すと顔だけを居間に覗かせて、一応の就寝の挨拶を銀時に告げた。
自室に戻って申し訳程度に布団を敷き整え、早速と言わんばかりに倒れ込む。
余程疲れていたのか、閃時は数分と経たずにすこーんっと眠りに落ちた。
この後に起こる事を何一つ知らずに・・・。










夢も見ない程に深く眠っていた閃時だったが、強烈な酒と煙草の臭い。
そして何より・・・通常の四倍はあろうかと思われる加齢臭に嗅覚を刺激されて、眉を寄せて唸りながら寝返りを打とうとした。
が、身体の自由が利かずゴロリと寝返りを打つ事が出来ない。
金縛りだろうか?と徐々に覚醒に向かう意識でそう考えるが、金縛りとは何だか違うような感覚にさらに眉を顰める。
霊的な物とかではなく、物理的に縛られている感じがしてならないのだ。
兎にも角にも、自分の身に何が起こっているのか見極める為に閃時は無理矢理意識を覚醒させ、鉛でもぶら下げたように重い両の瞼を押し上げた。
と、瞼が作る闇に慣れ切っていた両目の奥が思わぬ明るさにツキンっと痛む。
うぅっと再び唸って反射的にぎゅっと目を閉じると、もう一度緩々と目を開いた。
寝起きの為にぼやける視界を払拭するように瞬きを繰り返せば、やっと視界がクリアになる。
布団で眠っていれば明るさなどは別として、普通、視線の先は天井か壁・襖。
うつ伏せで眠っていたのなら枕が視線の先に来る物だが・・・閃時の視線の先には、床板と自分の物と思わしき投げ出された両足があった。
壁か何かに凭れ掛かって座り、俯いた時のような光景だ。
そう言えば、背中に何か固い感触があるなぁっと思考を巡らせる。
いやいや、可笑しいから。俺、布団に転がって寝た筈だからと、訳の分からない状況に閃時が混乱していると、漸く聴覚も復活したのか聞き慣れた笑い声を耳が拾い上げた。
その中に、一般人なら聞き慣れてはいけないだろう笑い声も混じっていて、閃時はがばりっと顔を上げる。
勢い良く顔を上げ過ぎたのか、凭れ掛かっているらしい何かに強かに後頭部をぶつけて、痛っ!!と反射的に悲鳴を上げた。
ぶつけた後頭部に手を持って行こうとしたが、ピクリと肩が動いただけで手が持ち上がらない事にさらに訳が分からず目を瞬かせる。



「んぁ?おーやっと目が覚めたか閃時ー」



先程の悲鳴を聞き止めたのか、銀時に声を掛けられてそちらに視線を向けた。
視線の先には何故か床に直接座り込み、円陣を描く四人のマダオ達。
その周りには酒の空き瓶やら空き缶が散乱し、約一名の元からはゆらゆらと紫煙が天井へと昇っている。
通りで酒と煙草の臭いがして、加齢臭が通常の四倍の筈だと閃時は溜息を吐いた。



「てか・・・何で床の上に直座り?」



何時もなら、二つのソファに二人ずつ座り、真ん中のテーブルに色々と広げている筈なのにと首を傾げる。
そもそも、結構な大きさのあるテーブルは何処に行ったのだろうかと、さらに首を傾げた。
そして何故、未だに身体の自由が利かないのだろうか。
何となく察しが付いてはいるのだが、出来ればその現実から目を逸らし続けたいと、心底閃時は思った。
思ったのだが・・・そうも言ってられないだろうと、自分の身体を今度はじっくりと見下ろす。
予想していた通り、二の腕の中程から肘に掛けて胴体ごとロープでグルグルに巻かれ、両手は後ろ手で縛られている。
身体を捩ると背後でガタゴトと音がするので肩越しに振り返れば、テーブルの天板が見えた。
どうやら、通常は居間のど真ん中に鎮座しているテーブルを壁際に立て掛けて、閃時をそれに凭れ掛かせた上でさらに閃時の身体をテーブルに縛り付けているようだ。



「って、おぃいぃいぃぃいっ!!可笑しいだろう!?どう考えても可笑しいだろ!?何で完璧に拘束してんだゴラァアァッ!!」



今まで、奇襲を掛けられて布団で簀巻きやらはを嬉しくも無いし望んでも無いが経験させられてはいる。
が、此処まで完璧な拘束はされた事が無い。
何やら悪い予感がひしひしとして、閃時は口元を引く付かせた。
何とかして拘束を振り解こうとする閃時の姿に、四人のマダオ達はニヤリと口角を吊り上げる。



「えー・・・それでは!!本日の主役も目を覚ましたって事で!!」
「いやいや主役って何?とりあえず、ロープ解け。そんで其処に並べやマダオ共。今ならザビエルカットだけで許してやるから」



ビール缶をマイクに見立てて、大分酔いが回っているらしい赤ら顔で銀時が不穏な発言をする事に、閃時は慌てて口を挟む。
しかし、そんな物は何処吹く風と言った様子で銀時がさらに続けた。



「『第一回!チキチキ閃時幼少時語り・IN万事屋!!』を開催します!!」
「「「おーっ!!!」」」
「おーっ!!!じゃねぇえぇええぇぇっ!!止めてくんない!?本人居る前でそう言う事すんの止めてくんない!?せめて俺が居ない所でやれぇぇええぇぇぇっ!!」



ぎゃあぁあぁぁっ!!と悲鳴を上げる閃時を他所に、やはり赤ら顔の桂が徐に立ち上がったかと思うと、ビシッと右手を上げる。



「一番!!桂小太郎行きます!!」
「俺の話しを聞けぇえぇぇぇえぇっ!!」



悲痛な閃時の悲鳴をBGMに『第一回!チキチキ閃時幼少時語り・IN万事屋!!』の幕は開かれた・・・。










その日、桂は何時ものように日中のかぶき町を散歩していた。
お尋ね者の自覚が足りなくは無いか?などと言う言葉は、この男には無意味である。
むしろ、堂々とし過ぎて逆に気付かれないので問題は無いと言う事にして置こう。
そうでないと話が進まないので。
ちなみに、珍しくペットのエリザベスも連れていない事を追記して置く。



「茶屋にでも寄るか・・・」



少々の喉の渇きを覚えたのかぽつりと呟いて馴染みの茶屋の方に足を向けた桂だったが、一歩足を踏み出そうとした所でポスンと足元に軽い衝撃を受けて立ち止まった。
ん?っと首を傾げながら足元に視線を落とせば、腰よりもずっと低い位置に小さな頭がある。
桂がおや?っと目を瞬かせると、小さな頭が動いて見慣れた顔が銀色と一筋の黒の混じった髪の下から現れた。
見上げて来る左右色違いの瞳には驚きなどはなく、ぶつかったと言うよりも、確信を持ってぶつかって来たようだ。



「おぉ、閃時君ではないか」



ぶつかって来たのが昔馴染みの銀時の息子・閃時である事に気付くと、桂はふっと表情を綻ばせる。
桂の言葉にうんっと閃時は頷くと、後ろから抱き付くようにしていた桂の足から離れた。



「まさか一人ではあるまいな?」



閃時が離れた事でやっと身体を反転させる事が出来た桂は、膝に手を置いて屈み込んで問い掛けた。
それにうんっと閃時が首を振ると、少し離れた所から閃時を呼ぶ声が聞こえる。
声のした方に視線を向ければ慌てて駆けて来る新八の姿があった。



「ははうえ」



駆けて来る新八に閃時もててっと逆に駆け寄ると、ぽすんっと音を立ててその足に抱きつく。



「もー・・・勝手に走って行っちゃ駄目でしょうがっ!」



めっ!と少し眉尻を吊り上げて叱る新八に、あぅっと眉尻を下げた閃時は、99%自分が悪くても残りの1%自分が悪くなければ、その1%を100%に上げる為に口先三寸で相手を丸め込み、最終的には謝らない男の息子とは思えない程の素直さでごめんなさいと謝った。
素直に謝った閃時に新八はにこりと笑顔を浮かべると、もう怒ってないよと言うように小さな頭を撫でる。



「相変わらずのようだな新八君」
「え?あっ、桂さんじゃないですかっ!!あぁ、だから急に閃時が走って行っちゃったんだ」



常日頃、外は人が多いから走っては駄目と言い聞かせ、普段ならそれをきちんと守る閃時が珍しく急に走って行った謎が解けたのか、新八は苦笑った。



「こんにちは桂さん。今日は珍しくお一人ですか?」
「あぁ、こんにちは。エリザベスにはちと用事を頼んだのでな。今日は一人で散歩だ」
「って言うか、指名手配犯の自覚あります?日中堂々散歩してて大丈夫なんですか?」
「真選組の連中に見つかったとしても、逃げるので問題ない」
「今更でしたね」



言うだけ無駄かと溜息を吐いた新八は、未だにぴとりと足にくっついて、首が痛くなるのではないかと言う角度で己の頭上でやり取りをする二人を見上げる閃時の為に少し屈み込む。



「閃時、桂さんにご挨拶した?」



首を傾げて問えば首を振られたので、じゃあちゃんとご挨拶しないとねっと閃時を促した。
うんっと頷いた閃時は、くっついてた新八の足から離れて再び桂と向き合うとぺこりと頭を下げる。



「こたおじさん、こんにちは」
「はい、こんにちは。ちゃんと挨拶が出来て偉いな閃時君」



下がった頭が元に戻った所で桂も挨拶を返す。
先程と同じように膝に手を置いて視線の高さを近付けると、褒めながら閃時の頭を撫でた。
褒められた事が嬉しかったのか、閃時は控えめににへっと笑うとまた新八の足にくっついて、こたおじさんに、ほめられたと報告する。
態々報告するその姿が微笑ましくて、新八はよかったねーと言いながら頭を撫でた。



「そう言えば、何処かへ行く途中だったのではないのか?」
「いえ、行って来た帰りなんです。大江戸デパートの屋上でヒーローショーがあったんで」
「ほほー。子供は本当にそう言うのが好きなのだな」
「あんまりテレビとか見ない子なんですけどね。今人気の『忍者戦隊ゴニンジャー』は大好きで、放映時間になるとテレビの前から動かなくなっちゃうんです。その時のCMでヒーローショーの告知があって、行きたいってせがまれて行って来ました」



その様子を思い出したのか、くすくすと小さく笑い声を零す新八に桂も釣られて笑みを零す。



「閃時は、大きくなったらニンジャーレッドになるんだよね?」
「うん。せん、おおきくなったら、ニンジャーレッドになる」
「ニンジャーレッドになれたら、何をするんだい?」



この時期の子供特有の夢を語る閃時に桂が笑いながら問い掛けると、問われ慣れ答え慣れているのか直ぐに応えが返された。



「わるものをせんがやっつけて、せんがすきなひと、みんな、せんがまもるの」



きゅっと小さな手を握り締めて語る閃時に、そうかそうかと桂は頷く。



「小太おじさんも、守って貰えるのかな?」



『せんがすきなひと』の中に、自分も入っているのだろうか思って桂が尋ねれば、うんっと大きく閃時は頷く。



「こたおじさんも、せんが、まもってあげる」



そう言ってまた、にへっと笑った。










「・・・と、言う事があったのだ」
「あったのだじゃねぇよ!!このヅラァアァァァァッ!!」
「ヅラじゃない桂だ」



満足そうに語り終えた桂に閃時が噛み付くが何の効果も無く、お決まりの台詞が返されるだけだ。



「懐かしいなぁ。ゴニンジャーごっこよくやらされてたわ」
「わしもわしも。『くろもじゃかいじん、かくごー』って、遊んじょったのー」
「黙れよモジャコンビッ!!懐かしそうに目ぇ細めてんじゃねぇっ!!」
「所で閃時ィ」
「何だよ!?」



ぷかーっと暢気に煙を吐き出す高杉に声を掛けられ、がぅ!!っと吼えそうな勢いで応える。



「今でもニンジャーレッドになりてェのかァ?」



ニヤニヤと笑う高杉にビキリと米神に一つ、青筋を浮かばせた。



「なれるもんならなって、今すぐ目の前のマダオ怪人四体をぶちのめしたい」



ニヤニヤと笑う四人をギロリと睨んで唸るように言葉を吐き出すが、やはり何の効果もなかった。
楽しげな笑い声を上げて何度目かは分からないが、かんぱーい!!と缶やらグラスやらをぶつけて、マダオ達は一気に酒を煽る。
ぷはっ!!と同時に息を吐いたかと思うと・・・。



「二番!!坂本辰馬行くろー!!」
「待て待て待てぇいっ!!」



桂同様、すっくと立ち上がって右手を上げた坂本に閃時は慌てて声を上げるが、奮闘空しく二幕の幕が上がった・・・。










久々に地球に戻った坂本は、昔馴染みの中でも居所のはっきりしている銀時に会いに行った。
銀時に・・・と言うよりも、その家族にと言った方が正解かもしれないが。
スナックお登勢の横にある階段をカンカンっとリズム良く鳴らして二階に上がると、呼び鈴を押す。
直ぐに中から応答があり、新八が顔を出した。
来客が坂本と気付いた瞬間、一瞬だけ目を丸くしたが新八はにこりと笑顔を見せる。



「お久しぶりです坂本さん。何時お戻りになったんですか?」
「久しぶりじゃのー。地球に戻ったんはついさっきじゃー」



あっはっはっはっ!!っとお決まりの高笑いを上げる坂本に、新八も釣られたようにクスクスっと笑い声を零した。



「ははうえ・・・?」



何時までも玄関先で立ち話も何だからと、新八が坂本に上がるように促しかけたその時、控えめな呼び声が聞こえた。
新八がそれに応えるように振り返れば居間と廊下を仕切る戸の前で、小さな拳で今にも閉じそうな目を擦る閃時の姿がある。



「閃時、起きちゃった?」
「おっ?閃時かー」



新八の声に続いて聞こえた声に、閉じそうだった目をぱちりと開けた。
漸く坂本の存在を認識したのか、あっと小さく声を上げて駆け寄って来る。
頻繁には会う事は出来ないが、会う度に全力で遊んでくれる坂本は閃時のお気に入りなのだ。
トテトテっと可愛らしい足音を立てて駆けて来る閃時の姿に、あっはっはっはっと笑い声を上げながらしゃがみ込んで到着を待つ。



「たつおじさん」
「おー」



その勢いのまま飛びつこうとしたのか、両腕を上げる閃時に坂本も両腕を差し出すが、後少しと言う所で閃時は立ち止まってしまった。
おぉ?っと坂本が目を瞬かせるのを他所に、閃時はペコリと頭下げる。



「こんにちは」
「おぉー!!そうじゃったのぉ!!こんにちはじゃ!!閃時は偉いのー」



新八に言われる前にきちんと挨拶をした閃時へ挨拶を返しながら坂本が頭を撫でると、にへっと嬉しそうに笑って今度こそ飛び付いた。
坂本はそれを軽々と受け止めて、そのまま抱き上げると立ち上がる。



「元気しちゅうがかー?」
「うん。せん、げんき。たつおじさん、は?」
「おー!!元気じゃー!!」
「たつおじさん、げんきだと、せん、うれしい」
「わしも、閃時が元気じゃと嬉かー!!」



あっはっはっはっと笑いながら坂本が閃時の丸く柔らかい頬に頬摺りをすれば、嫌がる所か閃時は擽ったそうに首を竦める。
微笑ましいその姿に、新八はふっと穏やかに微笑んだ。










「・・・と、言う事があったろー」
「そんな事してねぇし!!言ってねぇえぇぇえぇっ!!」



作ってんじゃねぇえぇぇっ!!と言う叫びはさくっと無視され、他三人のマダオからはそれいいなぁー等と、閃時からしてみれば羨む所なんざ何処にもねぇだろうがっ!!と怒鳴りたい台詞が零れる。



「そう言えば、あの頃はオメェ等の中で一番坂本に懐いてたなー」
「かくれんぼとか色々しちょったしのー」
「かくれんぼと言えば、あれ覚えてっか?」
「おー覚えちゅう、覚えちゅう」
「何だ?かくれんぼで何かあったのか?」
「ついでだから話せ」
「だーまーれーやー!!」



『かくれんぼ』と言うキーワードでまた何か思い出した銀時と坂本に、桂と高杉が食いつく。
が、これ以上話されて堪るか!!と閃時が暴れた。
一緒に縛られたままのテーブルがガタゴトと騒がしい音を立てる。



「暴れんじゃねぇよ閃時ィ」
「これで暴れるなって方が無理だろうが!!この鬼○郎もどき!!」



がるるるっ!!と唸って暴言を吐く閃時に、ピクリと高杉の包帯に隠されていない片眉が動いた。
そして、ふっと何やら確実に企んでいる笑みを浮かべると、すぃと立ち上がる。
閃時がヤバイと思った時にはもう遅く・・・。



「三番。高杉晋助、行くぜー」
「ぎゃぁあぁぁぁあぁっ!!さっきの謝るから止めろぉおおぉおぉっ!!」



桂や坂本のようにテンションは高くはないが、きっちりと右手を上げた高杉に閃時は懇願するが・・・。
ニヤリと笑みを浮かべて高杉がゆっくりと口を開いた事で、問答無用で三幕が上がった・・・。















※思ったより長くなったので、二つに分けます。
もう少し、お付き合い下さいませぇえぇぇぇぇぇえぇっ!!!