愛しい傷跡 後編










腹を満たして、やっと一息を吐く事が出来た少年は、何故自分が此処に居るのかと男に問うた。
問いの答えは至極あっさりした物で、道で行き倒れてたから連れ帰ったとの事だ。
そして、逆に男に親はどうした?帰る所はあるのか?と問われる。
暫し迷った末、少年は正直に自分に親が居た記憶は無い。帰る場所も無いと応えた。
ボソボソと呟かれた言葉を黙って聞ていた男は、ふむっと一つ頷いて顎を摩った後、行く所がないのなら此処に居れば良いと、呆気羅漢と言い放つ。
男の言葉に、少年は瞠目した。
何を企んでいるんだと疑心に満ちた瞳を向けても、男はただカラカラと笑って、それなら家の子を紹介しないとなぁと言って一度部屋から出て行く。
そして、直ぐに紅い着物を来た少女とその腕に抱かれた幼子を連れて戻って来た。
銀時の手を抱き抱えて眠っていた幼子は新八。
その幼子を慌てて連れ去った少女は妙と言った。
新八はくりっと丸い瞳に不思議そうな色を浮かべて少年を見詰め。
少女は警戒した瞳で少年を睨み付けていた。
異なる二つの視線に晒されて、少年は居心地悪そうに背を丸める。



「妙、新八。・・・あー名前を訊いてなかったなぁ」



うっかりしていたと笑いながら額を叩く男に、少年は無いと簡潔に応えた。
付ける者の居なかったし、名があったとして呼ぶ者は居ないから困らないと淡々と告げる。



「いやいや、困るぞ?これからもの凄ぉく困るぞ?」
「別に・・・困らない」
「いやいや、お前さんが困らなくても私等が困る。一緒に暮らす者を何て呼べばいいのかって」
「父上!!」



一緒に暮らすなんて一言も言ってない!!と少年が言い掛けた所で、それよりも早く妙が声を上げた。
その余りにも大きな声量に、少年は愚か、男も新八も驚いた表情を浮かべる。



「そんな事を簡単に言って!!犬猫じゃないのよ!?」
「そんな事見れば分かるとも。でも、行く所も無いと言うのだから別にいいじゃないか。新八、お前に兄上が出来るぞー」



あははははっと楽しげに笑って、男は妙の膝の上に抱えられていた新八を抱き上げた。
あにうえ?と不思議そうに呟いて、きょとりと目を瞬かせる新八に、男は楽しそうにそうだと頷いて見せる。
尚も何か言いたそうだった妙だが、結局は家長である父親が決めた事に従うしか無い事を知っているので、はぁっと年に似合わない重い溜息を吐くだけに留めた。



「ま、待てよ!!」



其処でやっと我に返った少年は声を上げる。
自分が是と言う前から、此処で暮らす事が決定しつつある事に慌てた。



「俺ァ鬼子だぞ!?そんな奴を此処に住まわせるたァ何企んで・・・っ!!」



やがんだっ!!と続ける筈の言葉は、何の前触れも無く脳天に落とされた拳で強制的に止められる。
ゴィイイィイィンッ!!と、とてつもなく痛そうな音が響いて、男と新八は自分に振り下ろされた物ではないが、反射的に『いったぁ・・・っ』と呟いていた。
直接殴られた少年は痛いと言う事も出来ない程の激痛に、ブルブルと身体を振るわせるだけだ。
その衝撃も僅かだけ和らぐと、頭を押さえて生理的に浮かんだ涙を滲ませる目で拳を振り下ろした張本人・・・妙を睨む。



「何しやがんだっ!!」
「何じゃないわよ!!アンタが悪いんでしょ!?人の好意を何か企んでるとか邪推したんだから!!素直に受け取りなさいよ!!」
「そう思ったってしょうがねぇだろうが!?俺ァ鬼子だぞっ!!」



そう叫んだ瞬間、再びゴィイィイィンッ!!と音を立てて少年の頭に妙の拳が振り下ろされた。
今度は頭を抑える手ごと殴られて、もう、どちらを押さえて良いのか分からず少年は蹲る。



「あーら。鬼子の癖に私の拳骨如きで蹲るなんてだらしないわね」



腕を組んで自分を見下ろす妙を少年はギロッと睨みつけるが、あっさりと受け流されてしまった。
ぷいっと少年から視線を外した妙は、父親の膝の上でぽかーんっとしていた新八の手を取ると自分の傍らに引き寄せる。



「新ちゃん。もう寝る時間よ」
「はーい」
「温かくして寝なさい」
「はい。おやすみなさい」
「おやすみ、なさーい」
「うん、おやすみ」



先程の事などまったく意に介さぬ様子で妙は新八と共に就寝の挨拶を告げてさっさと部屋から出て行ってしまった。
あっさりとしたその態度に睨み付けていたのも忘れて、少年は唖然とした表情で文句一つ言う事も出来ずに見送るしかない。



「妙の拳骨は効くだろ?三つ年上のこの辺のガキ大将もあれ一発で泣かせた位だからな」



うははははっ!!と快活に笑う男に、少年は二度目位止めてくれてもいいだろうがと言いたげな視線を向けた。
男はその視線を妙のようにさらりと受け流すと、少年を助け起こして布団に横たわらせる。
起き上がろうとする少年を制して、肩口まできっちり掛け布団を引き上げると、にこりと笑った。



「名は、明日の朝までに考えて置くから眠りなさい。今は何も考えず、体を癒す事。それがお前さんの一番の仕事だ」
「でも・・・早く出て行かなきゃ、迷惑、掛ける・・・」
「鬼子だからか?」



尚を起き上がろうとする少年を、男は軽く手で押さえて問う。
ぎこちなく頷かれ、さらに何故と問い掛けた。



「皆・・・そう、言うから。こんな髪の色と目の色してるのは、鬼子しかいない・・・って」



ボソボソと告げる少年に、男はふっと笑みを浮かべたかと思うと徐にその鬼子の証だと言う髪を生やした頭を撫でる。
慣れない感触に戸惑い、もう一つの鬼子の証だと言う紅い瞳が揺れた。



「確かに、普通じゃそうそうお目に掛かれない組み合わせだな」
「・・・っ」
「しかしなぁ。それで言ったら、白毛で赤目の兎は鬼子と言う事になるなぁ」



楽しげに言葉を綴る男に、少年はぱちりと目を瞬かせる。
兎?兎って耳が長くてぴょんぴょん跳ねるあれの事か?と。



「お前さんには角も牙も見当たらないし・・・。こう言うのは、個性と言うんだぞ?」
「こせ・・・い?」
「皆が皆、同じ色と言うのは詰まらんだろう。鬼子の証じゃなくて、お前さんだけの色だよ」
「俺だけの・・・」



男の言葉を噛み締めるように、少年は繰り返す。
俺は、鬼子じゃないのか。この色は鬼子の証じゃなくて、個性で、俺だけの色なのか、と。
そんな事を言われたのは初めてだった。
つんと、鼻の奥が痛む。
また、目の奥がぐわりと熱くなって、目の端から何かが零れた。



「ゆっくり、休みなさい」



声と共に闇が下りて来る。
闇を作り出したのが両目を覆う男の手だと知って、少年の目から止まる事無く何かが零れ落ちる。
この何かは涙と呼ぶ物だと思い出して、少年はゆっくりと意識を手放した。
・・・男は、約束通り翌日の朝にお前さんの名前を考えたぞと、目の下に隈を作りながらも意気揚々と訪れた。
戸惑う少年の眼前に、達筆な文字で『命名・銀時』と綴った半紙を突き出して、どうだと言わんばかりに得意満面な表情だ。



「最初はな、雪の時に見つけたから『雪時』にしようと思ったが捻りがないだろう?それでふと外を見たら、積もった雪が月明かりを反射して銀色に見えてな。おぉ!!これだ!!と思ったんだ」



突き出された半紙を受け取って、文字を知らぬ少年はそれでも其処に書かれているのは『銀時』と言う文字であり、そして・・・自分の名なのだと胸に刻み付ける。



「あー・・・その、な?気に入らなかったら、考え直すが・・・」



じぃっと半紙を見詰めたまま身動ぎ一つしない事に、男は少し困ったように声を掛けたが、少年が大きく頭を振った事でほっと表情を緩めた。
その日から、少年は『銀時』となった。
それから数日はあっと言う間に過ぎる。
最初こそ男が『銀時』と呼ぶ度に一瞬の間を置いて返事を返していたが、漸く直ぐに返事を返せるようになった。
その度、男がにっかりと笑うので、銀時は照れ臭くてしょうがない。
何より・・・。



「父と思ってくれていいからな」



と、頭を撫でられ、正直どうして良いか分からなかった。
世に父親と言う存在がある事は知っていても、自分には無縁の物だったのだ。
妙と新八を指して銀時の妹と弟だと言われた上に、銀時を指して、妙と新八の兄上だと言われてさらに戸惑う。
新八は、良く分かっていないのだろうが、父がそう言うのならそうなんだろうと、銀時を拙いながらにも『あにうえ』と呼ぶ。
だが、妙は違う。
自我もしっかりしている年頃であるし、未だ銀時を警戒している節がある。
そう言った事もあって、本当に此処に居ても良いのだろうか?と言う想いが日毎募るのだ。
縁側で膝を抱えて、人とは何と欲深い事かと銀時は溜息を吐く。
安心して眠れる場所があって、腹は盗みをする事無く満たされて、それだけ満足するべきなのに、出来る事ならと願ってしまった。
自分も、本当に家族の一員になれはしないか、と。
少し上げた視線の先、庭で楽しげに遊ぶ妙と新八の中に、自分も笑って混ぜてくれないか、と。
そう考えて、銀時はぶんぶんっと音を立てて頭を振る。
これ以上望んではいけない。これ以上を望めば、絶対に罰が当たると、浮かんだ想いを振り払った。
楽しげに遊ぶ二人を見ているからそんな事を考えるのだと、銀時は音も無く立ち上がって、男が用意してくれた部屋へ戻る事にする。
その後姿を、妙は何か言いたげに見詰めた。
父が決めたから出て行けとは言わないし、別に居ても良いと思っている。
だが、行き成り赤の他人を家族だと受け入れるには、自分の自我はしっかりし過ぎていた。
少しだけ、すんなりとそれを受け入れたまだ幼い弟を羨ましくも思う。
何かきっかけがあれば、私も兄上って呼べるのに・・・と、こっそりと溜息を吐いた。
不意に、寒さが身に染みて、妙は中に戻ろうと新八に声を掛けようとして振り返る。
振り返って、瞳を凍らせた。
視線の先には、四肢の爪で大地を掴み、低く唸る大きな犬の姿。
近所でも有名な、獰猛な野良犬だ。
何度か大人達が捕獲しようと試みたが、それを嘲笑うようにひらりと逃げて行方を晦ます為、未だ野放しだった。
暫く姿を見ないので、父はこの寒さに何処かでひっそりと春を待っているのかもしれないなぁと笑っていた。
なのに、その野良犬が妙から離れた所に居た新八を狙っている。
新ちゃんっ!!と叫び掛けた妙の言葉は、野良犬が地面を蹴った事で悲鳴に変わった。
凶器のような牙が迫り来る事に、新八は悲鳴を上げる事も出来ずに硬直する。



「新ちゃんんんんんっ!!!」



悲鳴のような声を上げて妙が必死で新八に手を伸ばしたその時。
傍らを銀色が駆け抜けた。
妙の手が新八に届くよりも早く、銀時が野良犬と新八の間に割り込み左腕を掲げる。
新八に突き立てられる筈だった牙は、銀時の掲げられた左腕へ・・・正確にはくの字に曲げられた肘を飲み込むようにして突き立てられた。



「う・・・っ!!」



ぐじゅっと嫌な音と共に牙が食い込んだ其処から激痛が走り抜け、銀時は顔を顰める。
ぼたぼたと流れ出る血に、二人が背後でひっと息を呑むのに気付く。
しかし、銀時にそれを気にしている余裕はなかった。
目の前の野良犬を自分がどうにかしなくては、この次はきっと二人に牙を剥く。
それだけは絶対にさせないと、銀時はぐわりと口を大きく開くと腕に噛み付いたまま鼻面に皺を寄せ、グルルルと唸る野良犬の鼻面に逆に噛み付いた。
まさか反撃されると思っていなかったのか、ギャン!!と甲高い悲鳴を上げて野良犬は喰らい付いていた銀時の左腕を解放する。
その一瞬を見逃さず、銀時は右の拳を握り締め渾身の力を込めて、野良犬の左目を殴り付けた。
もう一度、ギャン!!と野良犬が悲鳴を上げる。
二度地面を転がった野良犬は戦意を喪失したのか、きゃうんきゃうんと鳴きながら逃げて行った。
あぁ、これで大丈夫だと思って、銀時はその場に倒れ伏す。
地面が、左腕の傷からの出血で赤く染まる。
遠くなる意識の中で二つの声が自分を『兄上』と呼んだ気がして、銀時は微かに笑みを浮かべた。










あの後、出掛けていた父が戻り、銀時は素早く医者の元に担ぎ込まれた。
後少し担ぎ込まれるのが遅ければ、大量出血の為に命が危なかったらしい。
それ程に銀時の傷は深かった。
三日三晩、生と死の淵をさ迷った銀時が目覚めた四日目の朝、新八と妙は大声で泣きながら銀時の首に縋り付く。
自分に抱き付いてわんわんっと泣く二人に戸惑ったが、泣き声に混じって『無事でよかった』と言う言葉と一緒に『兄上』と繰り返し呼ばれて、銀時も左腕が痛むのにも係わらず力一杯二人を抱き締め返したのだ。



「俺は、この傷を誇りに思ってる。二人を守れた証だからな」



だから、そんな顔すんなと笑って銀時は形の良い新八の頭に口唇を押し付ける。
頭に触れる唇の柔らかさがくすぐったいのか、ゆるゆると首を振るその様子に、くくっと喉の奥で笑った。
あれだけの出血を伴う大怪我でありながら、神経が傷付く事も無く無事だったのは運が良いとしか言いようがない。
だが例え、神経が傷付いて腕が動かなくなっていたとしても、銀時はあの時の自分を後悔する事は無い。
自分が守ったのだ。
己を『兄上』と呼んでくれる二人を。
それがどれだけ嬉しかったか。



「僕も姉上も、兄上には感謝してます。あの時、守ってくれた事もそうだけど・・・。父上が兄上を背負って帰って来たあの日まで、生き続けていてくれた事を」



そうでなければ出会えなかったからとふにゃりと笑う新八を、銀時はへらっと締まりの無い笑みを浮かべてぎゅうっと抱き締めた。



「ってかよー。それなら、妙の暴挙どうにかしてくれね?」
「あははははは。無理に決まってるじゃないですか」



溜息と共に零された言葉を、新八は爽やかにぶった切る。
元々、そう返されると思っていたのか、銀時はやる気の無い声でですよねーと相槌を打つだけだ。



「大体、姉上があーなったのは兄上の自業自得でしょうが」



何を血迷ったのか、新八が兄と呼ぶ男は、自分を弟としてだけではなく、一人の人間として・・・恋愛感情を持って好きだとのたまったのだ。
妙の前で。
それからだ。寝ぼけて銀時が新八の寝床に潜り込んだ朝、銀時の起床が真面目に生死が掛かった物になったのは。
ただ、それに対して新八は何の答えも返していない。



「さっき出掛ける時だって『あの馬鹿兄に何かされたら、容赦なく股間を蹴り上げてお仕舞いなさい。容赦なく』って言ってましたよ?」
「マジでか。ってか、容赦なくを繰り返すとこが怖ぇっての・・・」



がっくりと肩を落として項垂れる銀時の頭を、クスクスと笑いながら新八は撫でる。



「新ちゃんよ」
「はい?」
「これは『何かされたら』ってのにはならねぇの?」



今更ですがと言いながら、銀時は新八の身体に回したままの腕に力を込める。
それにんーっと声を上げると、にっと悪戯っぽい笑みを浮かべて新八はにゅっと腕を伸ばして銀時の首に巻き付けた。
きゅうっと腕に力を込めれば、え?え?っと銀時が戸惑った声を零す。



「僕が嫌じゃなきゃ、大丈夫なんじゃないですか?」
「えーっとですね・・・新八君。自分からやっといて何ですが・・・この密着度は色々危険なんですが。主に下半身が」
「容赦なく股間を蹴り上げましょうか?容赦なく」

「あ、ごめんごめん。ホントすみません」



今のは聞かなかった事にして下さいと必死で謝罪を口にする銀時に、ぶくくくっと殺し切れなかった新八の笑い声が零れた。
新八ぃオメェなぁ〜と零す様子が情けなくて、可笑しくて、我慢しきれなくなった新八は声を上げて笑う。
一頻り笑った後、むすっと拗ねた表情を浮かべる銀時の頬を、徐に摘んで引っ張った。



「ふふ、変な顔」



何すんだよと言いたげな銀時の視線を受けて、一言そう呟いた後、新八は頬を摘む手を退ける。
そして、もう一度ぎゅっと銀時に抱き付いた。



「兄上」
「ん?」
「姉上が帰って来たら、姉上に殴られて下さいね。僕と一緒に」



紡がれる新八の言葉に瞠目した銀時は、はっと直ぐに我に返ると新八の肩を軽く押して互いの身体を少しばかり離す。
それは拒絶の為ではなく、新八の瞳に宿っている真意を探る為だ。
紅い瞳と、黒い瞳が迷う事無く重なる。
揺るがない真っ直ぐな瞳に、ははっと銀時は無意識な笑いを零した。
こてりと新八の肩に頭を預けて、喉の奥で低く笑うとぎゅっと十八にしては細過ぎる腰を抱き締める。



「男前過ぎだろ、新八ぃ」
「それはどうも」



新八も笑う銀時に釣られたようにクスクスと笑うと、広い背中を抱き締め返した。
その夜。
二人仲良く痛烈な一撃を妙から頂戴し、銀時はその細腕の何処にそんな力があるのか問いたい衝動を堪えながら腕一本で吊り上げられる事となる。



「新ちゃん泣かすような事しやがったら、地獄に送るぞ馬鹿兄ゴラァ」



と言う言葉と共に・・・。










おまけ。



「そう言えば・・・。兄上って何時から僕の事をそう言う対象に見てたんですか?」
「直球勝負だねぇ。新ちゃんよ」
「だって、直球勝負以外だと直ぐにはぐらかすでしょ」



何年一緒に居ると思ってんだゴラァと言う新八は、左頬に氷嚢を当てている。
銀時も同じく、左頬に氷嚢を当てていた。
さっさと吐けと言わんばかりに見詰められて、銀時は小さく息を吐き出す。



「何時からつってもなぁ・・・。はっきりそうだって自分で気付いたのは、多分、妙がアイツと付き合う事になった時かねぇ」
「どうして?」
「あー・・・そりゃ、あれだ。妙の時は、よかったじゃねぇかって言えたんだけど・・・これが新八だったらって思ったら、腹立ったつーか・・・。誰にも渡したくねぇみたいなね?」
「いや、僕に訊かんで下さいよ。でも、そっか・・・うん、そっか」
「ってか、そう言う新八はどうなんだよ」



うんうんっと一人納得する新八に、銀時は口唇を尖らせて逆に問う。
妙の前ではあったが、銀時が新八に告白したのは随分前の事だ。
その返事は今日やっと頂けたのだが、その間何時もと変わらぬ様子であった新八に、あれは無かった事にされたのだろうかと、訊くか訊くまいかと葛藤する日々を送っていたのだから。



「うーん・・・多分、そうじゃないかなぁと思い出したのは兄上と同じ時期だったんじゃないかなぁ。でも、そうだってはっきり自覚したのは今朝・・・かな」
「マジでか」



思いも寄らぬ言葉に、銀時が突っ込めば新八は頷いた。
そして、徐に手を伸ばすと、例の傷跡のある左腕を撫でる。



「この傷を誇りだと言ってくれる兄上の傍に、一生居たいと思ったんです」



他の誰でもなく僕がと言って、新八はふわりと笑って見せた。
だから、姉上に殴られても後悔しなかったのだと。



「やっぱ・・・男前過ぎるわ、新八」
「それはどうも」



勝てそうにねぇわと溜息を吐く銀時に、新八はただクスクスと笑った・・・。















END





後書き

『もしも銀さんが小さい時に志村家に拾われて、新八達と兄弟として育ったらなパラレル銀新(若しくは銀→←新)』なリクでした!!
えーっと・・・あれですね。
頂いたパラレル設定が美味し過ぎて、過去部分妄想し過ぎてすみません!!
最初は、さらっと簡単に説明だけ入れるつもりだったんです!!これでも!!(本当かよ)
でも、書いてる内に過去話が楽しくなっちゃて・・・半分以上の長さを占めてしまい、ました・・・orz
いやー・・・パラレルって楽しいですね!!!(開き直るなぁあぁぁっ!!)
ちなみに、年齢設定も軽く弄ってます。

銀さん  十一歳→二十三歳
お妙さん 八歳→二十歳
新八   六歳→十八歳

てな感じです。
後、書くの忘れてたんですが、お父さんは四年後に亡くなってます(汗)
借金とかも無しの方向で、皆様の脳内にて補完して下さればと思います!!すみまっせんんんっ!!!
最後に、銀さんが『アイツ』と言ってるのも、お好きな妙受でご想像おば(爆死)
私の脳内ではあの人ですがwww

陸離様。
せっかく素敵設定でリクを下さったのに・・・。
蒼月の力量不足でこんな感じの仕上がりになってしまいましたアタヽ(´Д`ヽ ミ ノ´Д`)ノフタ
此処はもっとこう言う風なのが・・・と言うのがございましたら、拍手でもメルフォでも構いませんので、蒼月の尻を引っ叩いてやって下さいませ!!
企画参加、ありがとうございましたぁぁぁぁっ!!m(。_。;))m ペコペコ…
2009.02.08