何だかんだ言ってても。










ピンポーンっと呼び鈴が鳴った事に、自室でお登勢から頼まれたビデオデッキの修理をしていた閃時は、はーいっと声を上げながら足早に階下に向かった。
階段を下りている途中でまた呼び鈴が鳴らされる。
先程の返事は聞こえなかっただろうかと、はいはーい!っと今度はもっとはっきり聞こえるように大きめの声を上げて玄関の鍵を開けた。



「どちら・・・」



声を掛けながら戸を開けた閃時は、戸の向こう側に待っていた人物を確認するが早いか・・・。
続く筈の言葉を飲み込んで、ピシャリと音を立てて戸を閉めた。



「ぬっ!?何故閉めるのだ閃時君っ!?」
「不審人物の立ち入りはお断りなんで。帰れ」
「誰が不審人物だ。生意気言ってねぇでとっとと開けろ」
「鏡見て来いよ、指名手配犯」
「あっはっはっはっはっ!!わしゃ指名手配犯じゃなきー入れてくれろー」
「アンタが一番の不審人物だよ。また変な薬仕入れて来てねぇだろうな」



ガタガタと内と外で、開けない開けろの攻防を繰り返していたが、ガンガンっと戸を叩かれて閃時は渋々と戸を開けた。
よくよく考えてみれば、玄関先で指名手配犯+αに騒がれるより、人目が付く前に中へ入れて仕舞った方が安全だと判断した上での事ではあるが。



「お邪魔するぞ」
「邪魔するぜィ」
「あっはっはっはっはっ!!」



邪魔すると言いながら−約一名は高笑いしながら−も、デカイ態度で入って来る三人に、閃時は小さく溜息を吐いてとりあえず横に避けた。
念の為玄関から顔を出して辺りを見渡すが、どうやら先程のやり取りに気を引かれた通行人は居ないようだ。
まぁ大丈夫だろうと肩を竦めると、閃時は戸を閉めて勝手知ったる何とやらな風情で居間へと向かった三人を追う。



「おい閃時ィ。客に茶の一つも出せねぇのかオメェはァ」
「指名手配犯を客とは言わねぇよ」



居間に入れば当然のようにソファに座る三人の内、踏ん反り返る様にして座っていた高杉に声を掛けられ、それに軽口を叩きながらも閃時は台所に入ると人数分の茶の用意を始めた。
この様な軽口など、挨拶みたいな物だ。
慣れた手付きで茶の用意を済ませると、丸盆片手に居間に戻る。



「時に閃時君。銀時はどうした?」



コトンコトンっと小さな音を立てながらそれぞれの前に湯飲みを置く閃時に、この時間ならぐーたら此処で昼寝でもしている筈だろうにと桂が問う。
その問いに、あーっと苦笑い交じりに声を上げて、閃時は一人分空いていた高杉の隣に腰を下ろした。



「親父は入院中」
「ついに糖尿が悪化したかァ?」
「いや、それはまだギリギリ踏ん張ってる」



ニヤニヤと笑いながら煙管を取り出す高杉に、テーブルの上に置いてあった灰皿を差し出して、吸うなら窓際でと追い払う。
ちっと舌打ちしながらも素直に窓際に寄って行く高杉に、三人は顔を見合わせると小さく肩を震わせた。
ギロリと高杉に睨まれたので、三人はワザとらしく咳払いを一つして平静を保つ。



「・・・して?入院とは何かあったのか?」
「あー・・・まぁ、この間受けた依頼の時にちょっと怪我をね。怪我自体は絶対入院しなきゃいけない程のもんじゃないんだけど、良い機会だから色々検査受けとけって母さんが入院させたんだ。ちなみに、母さんと蓮華は見舞いと言う名の見張りに行ってる」
「そりゃ、金時も従うしかないのー。じゃが、金時が怪我をしたっちゅー事は相当危ない依頼じゃったんか?」



普段は文字通りぐーたら親父ではあるが、腕っ節は共に戦ったあの頃から落ちては居ないし、むしろ年月を重ねた事でさらに隙が無くなったと言える銀時が怪我をすると言う事は、余程事なのだろうと坂本は首を傾げた。
首を傾げる坂本に、閃時はんーっと相槌なのか微妙な声を上げて頭を掻く。



「依頼自体はそんな危ないもんじゃなかったんだけど・・・」



一応守秘義務ってのあるからと、依頼の最中に厄介事が発生して怪我をした事だけを閃時は告げた。
どうしても気になるなら親父に聞いてくれと苦笑って。
と、その時。
ピンポーンっと呼び鈴が再び鳴った。



「お?お客さんかのー?」



のんびりと茶を啜りながら零された坂本の言葉に慌てたのは閃時だ。
常に閑古鳥の鳴いていた十数年前と違って、依頼の大小はあれど、ソコソコの繁盛を見せるようになった万事屋はまさかーっと笑って流せない。
依頼客であれば、依頼を受ける受けないは別として、とりあえずは中に上げて話を聞く事になる。
坂本はこの際良いとしても、今現在も絶賛指名手配中な二人と依頼客を鉢合わせさせる訳にも行かず、閃時ははーい!っと返事を返して立ち上がると、湯飲みを無理矢理持たせた坂本と桂の腕を掴んで立たせた。
高杉の分の湯飲みは閃時が持ち、わたわたと居間と隣接する和室に三人を押し込む。



「出て来たらしばき回す」



襖を閉める際に年に似合わないドス声で三人に釘を刺すと、閃時は二度目の呼び鈴に慌てて玄関に向かった。



「どちら様ですか?」
「先日依頼した者だ」



ブーツに足を突っ込んで戸越しに声を掛ければ何処か偉そうな態度で応えを返されたが、閃時は素早く営業スマイルを浮かべるとガラリと音を立てて戸を開ける。
其処には恰幅が良く、頭が綺麗に禿げ上がった五十代半ばと言った男が一人立っていた。
実はこの男が、銀時が入院する羽目になった依頼を持って来た人物である。



「お待たせしてすみません」



それでも、閃時は営業スマイルを崩す事無く先ずは応対が遅くなった事を詫びた。



「まったくだ」



それに対して不遜とも言える態度の男に、一瞬だけ口元を引く付かせたが、平常心平常心と自らに言い聞かせて言葉を続ける。



「玄関先って言うのも何ですから・・・」
「此処で結構」



中にどうぞと言いかけた閃時を、簡潔な言葉で遮って男は二歩下がった。
つまり、お前が出て来いと言う事だろう。
むしろその方が有り難いとばかりに、閃時は玄関の外に出ると後ろ手で戸を閉めた。
後ろ手で閉めた事で、無意識に少し下がっていた顔を上げると同時に、目の前に茶封筒を突き付けられて少しだけ仰け反る。
突然の事に閃時がきょとりと目を瞬かせると、男は依頼の報酬だと何故か嫌そうに吐き捨てた。
報酬を支払うと言う事は、銀時は怪我を負った物の、依頼自体は無事にこなしたと相手が判断したと言う事だ。
なのに、何故そうも嫌そうにされなきゃなんねぇだよと内心顔を顰めながらも、表面上はやはりにこやかなまま受け取る。
受け取って茶封筒の中から紙幣を取り出し、依頼時に提示されていた金額である事を確かめると閃時は男ににっこりと笑って見せた。



「確かにお受け取り致しました。また何かありましたら・・・」
「二度と依頼などせん!!」



お決まりの文句を綴り掛けて、また遮られた閃時はピクリと米神の辺りが引き付くのに気付いたが、もう一度平常心平常心と己に言い聞かせる。
しかし、男の怒りが気になったのか、もう用は無いとばかりに踵を返し掛けた男を閃時は慌てて呼び止めた。
依頼の内容もその顛末も知っているだけに、閃時には男の怒りの理由が分からない。



「あの・・・何か父が失礼をしましたでしょうか?」
「失礼!?失礼だと!?」



コトリと首を傾げて問う閃時に、彼よりも拳一つ分は優に背の低い男は噛み付かんばかりの勢いで詰め寄る。
五十代半ばのおっさんに詰め寄られて嬉しい筈も無く、咄嗟に両手を胸の前まで上げるとこれ以上は近づくなと無言で訴えた。
が、男は興奮しているのかそんな閃時を無視して喚きながら詰め寄る。



「私は、娘を付け狙うストーカーからの護衛と、二度と娘に近づかぬように排除してくれと頼んだんだぞ!?」
「えぇ、それは僕も父から聞いて・・・」
「なのに!貴様の父親はあろう事か娘をストーカーに接触させたんだぞ!?どれだけ娘が怖い思いをしたと思ってるんだ!!」
「お嬢さんには怖い思いをさせて、本当に申し訳ないと思ってます。でも、父はそうするのが一番良いと判断して・・・」
「一番良いと判断してっ!?それで大怪我をしたんだろうが貴様の父親はっ!!目の前で人が血を流す姿を見た娘の心にどれだけの傷が付いたと思っているっ!?」



まぁ、それはそうなんだけどと閃時は苦笑う。
本来なら、ストーカーとその被害者を接触させるのは一番避けるべき事柄ではあったが、銀時がそれを実行したのには理由がある。
男の娘は確かにストーカーされていた。
ストーカーの正体は、実は娘の元恋人だったのだ。
これだけだと、別れた恋人が執拗に復縁を迫るが故の行き過ぎた行動と思われがちだが少し違う。
銀時が男の娘の護衛をしている間、閃時はその相手の事を調べていた。
調べて分かったのは、男の娘の本命は別に存在し、ストーカーと化した青年を貢がせるだけ貢がせて、ぽいっと捨てた事だった。
男は依頼時に『見知らぬ男に娘がストーカーされている』とはっきりと口にしている。
上辺を取り繕う為の嘘か、本当にそれを知らなかったかはこの際終わった事なのでどうでも良いのだが、これはどうも可笑しいぞと閃時はありのままに銀時に報告した。
そこで銀時は、青年と接触してストーカー行為をするのを止めるように諭したのだ。
そして、口から生まれたような男と称されるだけあって、言葉巧みに青年から本音を引き出す事に成功した。



『ただ一言・・・酷い事をしてすまなかったと、彼女の口から謝罪を聞けたらそれでいいんです』



貢いだ物は何一つ戻って来なくて良い、ただその一言だけ聞けたらいいんですと涙ながらに訴えた青年に、銀時はそうすれば二度とこんな事をしないな?と念を押し、二人を対面させる事を決めた。
・・・のだが、此処で誤算が生じる。
二股を掛けて、相手に貢がせるだけ貢がせた後、ぽいっと簡単に捨てた娘が、予想を遥かに上回る傲慢な性格の持ち主だったのだ。
そして、二人を対面させた場所が、人目を避ける為にと選んだビルとビルの間にある狭い路地だった事も災いした。
一言謝ればそれで終わりだと言うのに、娘は自分のした事を棚上げして、謝る所か青年に対して罵詈雑言を投げ付けたらしい。
謝罪を期待してやってくれば罵詈雑言を吐き掛けられ、挙句の果てに死ねとまで罵られれば、結果はどうなるかは簡単だ。
娘の余りの態度に終に我慢の限界を超えたのか、青年は路地裏に転がっていた割れたビール瓶を握り締めて娘に襲い掛かった。
勿論、銀時は万が一の事も考慮に入れて近くで待機していたので、直ぐに青年を止めに入る。
揉み合った拍子に二人は地面に倒れ込み、運悪く銀時は地面に転がる別の割れたビール瓶が腹に刺さってしまったのだ。
其処でやっと青年は我に返り、大慌てで救急車を呼んだ。
娘はと言うと、自分が事態を悪化させたのにも関わらず家に逃げ帰ったらしい。
一番逃げたかったのはその青年だろうに、彼は逃げる事もせずに、知らせを聞いて病院に駆けつけた坂田家の面々に、銀時の手術が終わるまでただ只管、土下座をして謝罪し続けていた。
そして、麻酔が切れて目覚めた銀時にも土下座して。



『彼女からの謝罪はもういいです。二度と付き纏うような真似はしません。本当に、本当に申し訳ありません』



と、泣きながらそう銀時に誓った。
銀時もそうしろと飄々とした態度で青年を許し、これは只の事故だと言い聞かせた。
それは出来ないと青年は食い下がったが、新八にまでもこれは只の事故ですと説かれて、最後に深々と頭を下げて去って行った。
翌日。
万事屋のポストに、幾ばかりの現金と謝罪を綴った手紙を収めた封筒がそっと投函されていた。



(アンタが本当の意味で悪い訳じゃねぇのになぁ・・・)



それを発見した閃時は、次こそは良い恋愛が出来るようにと、青年の幸せを願わずにはいられない。
きっと今も自責の念に駆られているだろう青年を思って、そっと溜息を吐いた。



「聞いてるのか!?」
「はい、勿論聞いてます。本当に、お嬢さんには怖い思いをさせて申し訳ありませんでした」



一際大きくなった男の怒声に、つらつらと別の事に思考を巡らせていた閃時は、実際はまったく聞いてはなかったが口早に謝罪の言葉を綴って頭を下げる。
内心、テメェの娘が悪ぃんだろうがと吐き捨てるが、こう言う相手には殊勝な態度で居た方が面倒が無くて良い。
二度と依頼しないと言うならば、それはそれで構わないとすら思えた。
多分、娘は自分の都合の悪い事は何一つとして話してないのだろう。
一方的に青年が悪い事になっている様だが、これ以上波風立てる事もないと判断して、閃時はその事に関しては口を噤んだ。



「ふん、まぁいい。相手から二度と娘に近づかないと手紙が来たからな。これを破ったら即警察に突き出してやる」



それは先ずあり得ないだろうと、閃時は男に気付かれないように小さく笑った。
言いたい事を言って気が済んだのか、男は踵を返す。
今度は引き止める事はせずに、黙って見送ろうとした閃時だったが・・・。



「まったく・・・腕が立つと評判だったから依頼したと言うのに。自分が怪我する前に相手を叩きのめせば良かった物を・・・。虚けの上に腑抜けだな貴様の父親は」



完全に馬鹿に仕切った男の言葉に、閃時は頭の奥でカチリと・・例えるなら、施錠していた鍵を開錠した時の様な音を聞いた。
それと同時に。



ガァアァアァアンッ!!!



と、けたたましい音がその場に響き渡る。
その場を去ろうとした男の行く手を遮るように、ゆらりと上げられた閃時の足が手摺の上部を力の限り蹴り付けた音だった。
それに驚いたのは男だ。
轟音と称しても良い音に、反射的にビクリと身体を竦ませる。
が、それも一瞬の事で、驚かされた事に腹を立てたのか、今だ手摺の上部に足を乗せたままの閃時を眉尻を吊り上げて振り返った。
怒鳴ろうとしたのか、男の口が少しだけ開く。・・・が。



「テメェ今なんつった?」



男が何か完全に口を開くよりも早く、普段なら少年らしい軽やかな声を発する閃時の口から、低く少し掠れた声が言葉を綴ってその先を封じる。
やや俯き加減の為、どんな表情でその言葉を発しのかは分からないが、声に潜むのは間違いなく怒気だ。
だが、男はそう言った事を察するのに長けていないのか、子供にそのような口を利かれてさらに腹を立てたのか閃時の問いとは別の言葉を綴った。



「年上に対して何だその口の利き方は!?貴様の父親は子供にまともな教育も出来んのか!?」



怒鳴る男の語尾の響きを掻き消す様に、再びガァアァァンッ!!と耳を劈くような轟音が轟く。
閃時が、今度は先程よりもさらに力を込めて手摺を足の裏で蹴り付けたのだ。



「俺はそんな事を訊いてんじゃねぇよ。テメェさっきなんつった?って訊いてんだ」



変わらぬ低い声でそう囁いて、閃時はゆるりと俯けていた顔を上げる。
目許が幾らか隠れる程の長さのある、銀色と一筋の黒が混じった前髪の下から、左右色違いの瞳が剣呑な輝きを秘めて男をひたと睨み付けていた。
その余りにも鋭い視線に、男の本能がやっと危機を悟ったのか、さぁっと顔から血の気を引かせる。
蒼白になった男に、閃時はピクリとも表情を変える事無く徐に右手を上げたかと思うと、その手で男の襟首を掴んでぐいっと吊り上げた。
近くなった剣呑な瞳に、男はひっと掠れた悲鳴を零す。



「テメェの娘がテメェに何て言ったかは知らねぇし、知りたいとも思わねぇけどな・・・。親子揃ってテメェの事棚上げしてんじゃねぇよ。心に傷が付いただ?テメェん所の性悪女に言っとけや。テメェが何をしたのか、胸に手を当ててよく考えてみろってな」



男と違って怒鳴り散らさない閃時の言葉は、静かに綴られる分さらに凄みを増す。



「それとアンタ、餓鬼だと思って見縊ってるかも知れねぇけどさぁ・・・。俺、今時のキレ易い若者なんだよねぇ。あんま調子こいてガタガタほざいてっとキレて・・・」



何すっか分かんねぇぜ?



と、口唇を男の耳元に寄せてひそと囁けば、吊り上げていた男の身体がガタガタと震え出した。
そっと顔を離して再び男と視線を合わせた閃時は、にこりと笑って何時の間にか爪先立ちになっていた男の踵を恐ろしいまでの丁寧さでコンクリートの上に下ろさせる。
そろりと襟首を掴み上げていた手も離すと、薄っすらと笑みを浮かべたまま男から一歩下がった。
トンっと上げていた踵がコンクリートの床を踏み締めた瞬間、笑みは掻き消えぎっと柳眉を吊り上げる。



「俺の親父を虚けだ腑抜けだとぬかすような奴の依頼なんざこっちから願い下げだっ!!二度とその面見せんじゃねぇっ!!」



吐き捨てるような閃時の怒声に、男は文字通り飛び上がった。



「とっとと失せろっ!!!」



ギリリと握り締めた拳を壁に叩き付け、ダァアァァンッ!!と響く音にも負けぬさらなる怒声に男は短く小さな悲鳴を上げると、転がるようにして階段を駆け下りて行った。
男の足音が万事屋から遠ざかり雑踏に紛れた頃、閃時は漸く壁に叩き付けていた手を下ろし、ふぅーっと息を吐き出す。
そして、何時の間にか握り締めていた茶封筒の存在を思い出した。



「叩き返しとけばよかったぜ・・・」



そう呟いて鋭い舌打ちを零すとガリガリと頭を掻いたが、貰えるもんは貰っとこうと思い直して皺の寄ってしまった茶封筒を後ろポケットに捻じ込む。
と・・・不意に背後から、パチパチと手を叩く音を三つ分聞き止めて、閃時はビシリと音を立てて硬直した。



「やはり男子たる者、啖呵の一つや二つ切れなくてはならぬな」
「こじゃんと、カッコよかったのー」
「中々やるじゃねぇか閃時ィ」



背後から聞こえる声に、閃時がギギッと油の切れた機械のような動きで振り返った。
その先には、玄関の戸を少しばかり開けて上から坂本・桂・高杉の順でまるでトーテムポールのように顔を縦に連ね、右目だけを覗かした三人の姿。



「な・・・な、な・・・っ」



予想もしていなかった光景に、閃時は酸欠の魚の如くパクパクと口を開け閉めする。
三人の台詞から推察するに、間違いなく男とのやり取りはばっちりしっかり見られてたようだ。
其処まで思考が辿り着いた瞬間、閃時は頬と言わず耳までぐわりと真っ赤に染める。
閃時の顔色の変化に、覗いていた三つの目がニヤリと弧を描いた。



「「「何だかんだ言いつつ・・・父ちゃん好き(じゃのー・なのだな・だなァ)」」」



語尾こそ違えどまったく同じ台詞を聞かされた閃時は、さらに首元まで真っ赤に染めて・・・。



「盗み聞きしてんじゃねぇえぇえぇぇっ!!!」
「「「俺の親父を〜」」」
「黙れぇえぇぇぇぇっ!!つうか、帰れぇえぇぇぇぇぇっ!!!」



腹の底からの絶叫を上げた・・・。















END





後書き

えー・・・はいっ!!
リク内容は『依頼主やら敵やらに銀さんバカにされてブチ切れる長男』です!!
一家揃っても可と言う事でしたが、今回は長男のみに絞らせて頂きました☆
奥さんとか姉さんとかが混じると、長男のブチ切れ度が下がってしまう気がしましたので・・・(汗)
普通に馬鹿にされる位じゃ簡単に長男がブチ切れてくれなかったので、父ちゃんには怪我して貰いましたw(待て)
後、攘夷組も混ぜさせて頂きました☆(笑)
如何でしょう?長男、ちゃんとブチ切れてますかね?
『長男だって、とと様大好きなんだぜ☆』がクリア出来ている事を祈ります(おい)

江月様。
企画参加一番乗り、ありがとうございました!!
お気に召しましたら、どうぞお持ち帰り下さいませぇえぇぇぇぇっ!!!(スライディング土下座)

2009.02.01