ってかさぁ・・・扱い違い過ぎね?










父親なんてそんなもん










何だか耳の奥がむずむずする。
小指を突っ込んで軽く穿ってみるが、指では届かない更に奥がむずむずするってか痒い。



「耳が痒いアル・・・」



不意に聞こえた呟きに視線を向ければ、向かいのソファに胡坐を掻いて座る神楽も同じように小指で耳を穿っていた。
これまた同じように痒い所に届かないのか、もどかしそうに眉を顰める。



「二人して何やってんですか?あんまりやると爪で傷が出来ちゃいますよ?」



意地になって耳を穿ってたら、台所での片付けが終わったのか呆れた表情を浮かべながら新八が事務所兼居間に戻って来ていた。
神楽に近付いたかと思うと、耳元に持ち上げていた手をやんわりと握って窘める。
それから俺の方に向いて軽く眉を顰めながら『銀さんも駄目ですよ』なんて可愛らしく叱った。



「んな事言っても痒いから仕方ないんですぅ」
「そうネ。痒いから仕方ないアル」
「耳掻き使えばイイでしょうが」



痛い思いするのは自分なのにと、ブツブツと呟きながら戸棚から救急箱を取り出して更に其処から耳掻きを。
はいっと俺達二人に向けられたが、お互いそれに手を伸ばす事無くにやんと笑う。



「「新八やってくれ(ヨ)」」



まったく同じ事を考えていたのか、綺麗にハモった言葉に新八は小さく溜息を吐いた。










「痛くない?」
「平気ヨ」
「もう指で掻いたりしちゃ駄目だからね?不衛生だし、何より怪我するから」
「耳掻きでやる方が恐いネ」
「そんな時は綿棒を使うの」



ソファに座った新八の膝枕で耳掻きをして貰ってる神楽。
顰めた声で会話を交わしながら、時折クスクスと楽しそうに笑う二人の姿。
あくまで楽しそうなのは二人だけ。
向かい側のソファに座る俺は、一人ポツンとその光景を眺めている。



(銀さん無視ですかコノヤロー)



二人同時に耳掻きをやってくれと言った後、新八は溜息を吐きはしたもののしょうがないですねぇっと言いながらも承諾してくれた。
・・・までは良い。
OKの言葉を聞いて直ぐに、俺と神楽の口論勃発。
俺が先だ!私が先ネ!と・・・まぁ、順番争いで。
それならじゃんけんだ!と構えた瞬間・・・。



「はい、神楽ちゃん寝転がって」



ティッシュや仕上げに使うつもりなんだろう綿棒を用意し終わった新八が、俺達の順番争いなんか何処吹く風と言った様子でソファに腰掛けると、何の迷いも無く神楽を呼んだ。



「はいヨ!」



新八の言葉に一瞬で構えを解いて新八の座るソファに飛び乗る神楽。
一瞬だけ見えた笑みは、明らかに勝者の笑みだった。



「ちょっ!おまっ!!何で神楽!?俺は!?」



慌てて抗議すれば、早くも神楽の頭の膝の上に乗せた新八が面倒臭そうに見上げて来る。



「銀さんも後でしてあげますから」



誰もしてあげないなんて言ってないでしょう?と、首を傾げられた。
あ、可愛い・・・じゃなくて!そんなプリティーな仕草でなんか銀さん誤魔化されないもんね!!



「こう言う時は上司ってか旦那様が先じゃね!?奥さんんんんん!!!
「誰が旦那様だ!誰が奥さんだ!!馬鹿な事ばっか言うならやってやんねぇぞゴラァア!!!
「アイタッ!」



素早い動きでボックスティッシュを掴むと、何の迷いも無く投げ付けられた。
痛いから!厚紙程度のもんだけど角とか地味に痛いから!!



「銀ちゃん大人しく待つヨロシ。敗者に相応しい姿でナ!
「どんな姿!?それどんな姿!?」
「銀さんあんまり煩いと本当にしてあげませんよ?」



自分を優先されたのが余程嬉しかったのか、ご機嫌な様子で新八の膝に懐く神楽に噛み付けば、真冬の朝の気温よりも冷たい視線と声にすぱっと切られる。
それは不味いと口を閉じれば、溜息交じり大人しく待ってて下さいと言われた。

そして・・・今に至る。
腑に落ちない・・・まったく腑に落ちないぃぃいいぃいいぃい!!
ってかさ!?ってかさ!?
新八は神楽に甘過ぎね!?
今回みたいに二人で何かお願いした時、絶対神楽を優先してね!?
神楽より先にお願い聞いて貰った事なくね!?
・・・ふーんだ、ふーんだ。
別にいいもんねぇ〜。
銀さんは大人だし、優しいお父さんだから娘に順番譲ってやるんですぅ。


そう胸の中で呟きながら、ソファにゴロリと寝そべる。
何処か楽しそうな二人を見るのは悔しくて、寝返りを打って背中を向けた。



父親なんてそんなもん。



なんて言葉、やっぱり胸の中で呟いてみた。















END