彼シャツならぬ・・・おまけのおまけ。別名銀さん救済話(・д・)チッ(ちょw)
現在時刻、夜の十一時半過ぎ。
新八が家に帰り、神楽と定春がそれに付いて行ったのは二時間程前。
現在の俺こと銀さん。
ソファの隅っこで一人寂しく体育座り。
あれ?俺、可哀想じゃね?すんげぇ可哀想じゃね?
何て呟いてみても、突っ込みも何も無くて一人と言う状況がひしひしと痛い。
あー・・・昼間、昼間ねぇ・・・。
あの時やんちゃしなきゃよかったぁああぁぁ!と、今更後悔しても遅いのね。
でも、後悔って後から悔いるから後悔であって、その場でどうのこうの出来るもんじゃないと銀さん思うんだけど、そこんとこどうよ?
なんて事、グルグル考えても空しさが増すだけ。
かはぁっと肺の中の空気を空にする勢いで吐き出して、もう温くなり掛けているだろう風呂に入る為に腰を上げる。
風呂入って、とっとと寝て、そんで朝になったらまた何時もの日常に戻れるんだ。
頑張れ俺!一人でも大丈夫だろ!!強い子だもんね銀さん!!!
空しさを増大させると分かっていながらも、自分で自分を励まして、とりあえず着替えを取りに行こうと和室に向かい掛けた所で、ジリリンっとあんまり鳴らない黒電話が鳴った。
依頼の電話か?なんて思うかチクショウー。
どうせイタ電か何かだろうと無視してたが、中々鳴り止まないそれにイラッとして、一言文句を言ってやろうと受話器を取った。
「はいはーい。万事屋銀ちゃんですけどー。営業時間は終了してんだよ!ゴラァアアァァア!!」
はい、応対終了!と、受話器を耳元から外し掛けた時、受話器の向こうからはぁっと盛大な溜息が聞こえる。
溜息なんて同じようにしか聞こえない筈なのに、何でかそれは耳に良く馴染む。
受話器を叩き付けようとした手が、ピタリと止まった。
『アンタねぇ・・・営業時間なんて設けてる場合だと思ってるんですか?』
深夜だろうが明け方だろうが、取れる仕事は取って下さいと、呆れたように言葉を綴るのは・・・。
「新八ぃいいぃいいいいぃいいいぃいいい!!!!」
『そんな大声出さなくても聞こえます!』
「うるせぇええぇぇぇぇえ!銀時ぃいいぃいいいい!!」
「うるせぇババァアアァァ!新八の声が聞こえねぇだろうがぁあぁぁ!!」
まさしく新八の声。
それも、下から叫ぶババァの声で微かに聞き取れる程度だったけど。
まだ何かババァ叫んでるみたいだけど無視。
それよりも何よりも、受話器を耳に押し当てて一言・・・いや!一声も漏らす物か!!と耳を澄ませる。
『もぉ・・・明日、お登勢さんに謝らないと・・・』
非常識にも程があると耳に痛い筈の言葉も、今の俺には意味は無い。
もっと声が聞きたくて、何?何?どしたの?と早口に言葉を綴る。
『銀さん、お風呂入りました?』
「え?風呂?・・・いんや、まだ」
『アンタねぇ・・・僕が帰ってからどれだけ経ってると思ってるんですか。もうお湯温くなってるでしょうが・・・』
「そりゃ、だって・・・新八が帰ったりするから銀さん一人が寂しくて落ち込んでたんだもん」
『もん言うな、三十路』
「三十路じゃないからね!?銀さんまだ二十代だからぁぁああぁあ!」
『その返しもそろそろ飽きて来ましたねぇ』
結構キツイ突っ込みに、うっと言葉を詰まらせれば受話器の向こうでクスクスと楽しそうな声。
何だかなぁと思うけど、新八が楽しそうだからまぁいいか、何て。
『銀さん。今日のお仕事、大工仕事だったでしょ?』
「んぁ?おーそうそう」
『結構埃っぽくなってません?』
「んーまーなー」
『お風呂入りたいでしょう?』
「そりゃ、まぁね」
『でも、お湯温くなってますよね?』
「だろうな」
焚き直すのも面倒だし、ざっと汗を流す位ならそれでも十分だろうと思ってたら、新八の口から意外な言葉。
『こっち、今からお風呂焚く所なんです』
「あれ?まだ風呂入ってねぇの?新八」
此処を出て約二時間。
それだけの時間があれば、帰って風呂に入って寝るのに十分な時間の筈なのにと首を傾げる。
『お風呂焚き終るのに、十五分位掛かるんです』
ねぇ、銀さん。万事屋から僕の家まで、スクーターで何分掛かりましたっけ?と呟く新八に、十分で行けます!と叫んで後の言葉を聞かずに受話器を置いた。
ガチャン!と、騒がしい音が聞こえたかと思うと、受話器からはツーツーと通話が切れた事を示す機械音。
思わず小さく噴出して、僕もそっと受話器を置く。
「甘いネ新八」
「うーん・・・だよねぇ」
後ろから聞こえた声に苦笑いながら振り返れば、呆れた表情の神楽ちゃん。
それでも、次の瞬間にはいひっと笑って、居間にお布団もう一組用意するネ!と、勝手知ったる何とやらな足取りで、奥に駆けて行った。
きっと、数分後には居間に三組の布団が仲良く並べられるだろう事を思って、僕はお風呂場に向かう。
宣言通り、十分で此処に到着するだろう銀さんが、直ぐに入れるようにと・・・。
Happy END♪