それは君なりの愛情表現










「おっ妙さーん!!貴女の勲が帰って参りましたー!!」
「いや、声でけぇよ近藤さん」




恒道館の母屋の玄関を開けて嬉々としてそう叫んだ近藤に、一緒に居た土方が呆れたように呟いていると、奥からトタトタと軽い足音と共に妙が現れた。



「お妙さんっ!!」
「静かにしろこのゴリラ」




妙の姿にキラキラと瞳を輝かせて再び叫んだ近藤だったが、速攻で妙の拳で敲きに沈められる。
結婚しても、このバイオレンスな関係は本当に変わらねぇな・・・と、苦笑うが。
近藤の一方通行だった猛アピール時期の返事と言う名の暴力に比べれば格段とその威力は落ちている事を知ってるだけに、まぁこの夫婦はこれで良いのだろう思う事にした。




「って言うか、まだ勤務時間じゃねぇのかこのゴリラ。あぁん?」
「こ、今夜は屯所の方で泊り込みになりそうなんで、着替えを取りに帰って来ました」




近くをトシと巡回してたついでにと、胸倉を掴まれて吊るされつつ、近藤は何とか昼下がりに戻って来た理由を述べる。
あら?と首を傾げて、そうなんですか?と土方に問う妙に、土方も頷いて見せた。




「じゃあ、用意しますからお茶でも飲んで待ってて下さいな」
「はい、お妙さんっ!!」
「だから静かにしろつってんだろうが。土方さんもどうぞ上がって下さいな」
「お、おう」




もう一度敲きに近藤を沈めた後、何事も無かったかのように妙は声を掛け、居間に居て下さいねと言葉を残し自分は台所に向かって行く。
とりあえず、半分意識を飛ばしてる近藤を助け起こし、土方は妙に言われたように居間に向かった。
自分は何時になったら妙によって気絶させられた近藤を運ぶ役目から解放されるのかと土方は唸るが、少なくともそれは近い未来には無いと割り切って溜息と共に、近藤の身体を居間の畳の上に転がす。




「あら、別に捨て置いて下さっててもよかったのに」



ふふっと笑いながら二人分の湯飲みを盆に乗せてやって来た妙に、そうもいかねぇだろうよと土方はまた溜息を零した。



「そう言やぁ・・・。三人とも居るみてぇだが、えらく静かだな」



差し出された湯飲みを受け取り茶を啜ると、ふと何かに気付いて居間を出て行こうとした妙に声を掛ける。
先程近藤が沈められた敲きに、見慣れた閃時のブーツの横に小さな草履が二足並べられていたので、閃時・蓮華・咲の三人が居る事は確信を持って言えた。
土方の言葉に妙はクスリと笑うと、こっちへと言葉にはせずに手招く事で伝え先に立って歩き出す。
それに首を傾げた土方だったが、まぁ付いてきゃ分かるかとばかりに後を追った。
そして縁側に面した部屋の近くで妙は一度立ち止まると、しーっと口唇に人差し指を当て、静かに部屋の中を覗くようにと仕草で示す。
土方は分かったと一つ頷いて、気配や足音を消してそっと部屋の中を覗き込んだ。
其処には、部屋の真ん中辺りで仰向けに寝転がって、すぅすぅと穏やかな寝息を立てて眠る閃時。
その両脇には、投げ出された閃時の両腕を枕にして同じく、くぅくぅと可愛らしい寝息を立てて眠る蓮華と咲の姿があった。
年相応の幼い寝顔を見せる閃時と、それにぴったりと寄り添い、閃時の上着の胸元を小さな手できゅっと握り締めて眠る蓮華と咲の姿は何とも微笑ましい。
麗らかな昼下がりに何とも似合いな光景に、土方の表情も知らず知らずの内に緩む。
そして、大声を出した近藤を、問答無用で敲きに沈めた本当の理由を知り苦笑った。




「じゃあ、私は勲さんの着替えを用意して来ますね」



三人に気を使ってか、ひそりと囁いた妙に頷けば。



「可愛い姿を堪能するのは構いませんが、起こさないでやって下さいね(起こしたらテメェどうなるか分かってんだろうな)」



っと副音声付きの言葉を向けられ、土方はブンブンと何度も勢い良く頭を縦に振った。
それに気を良くしてにっこりと微笑んだ妙は、慣れた足取りで奥へと向かって行く。
妙の後姿を見送って、気付けば額に滲んでいた冷や汗を土方は隊服の袖で拭った。
それから少しの間だけ眠る三人の様子を眺めてはいたが、起こすつもりがなくても万が一自分が傍に居る時に起き出されては有らぬ誤解を受けると、小さく身震いしてその場をそっと離れる。
居間に戻れば何時の間にやら復活していた近藤が、茶を啜りつつ厠にでも行っていたのか?と暢気に声を掛けて来た。




「いや、三人の寝顔見て来た」
「あーやっぱり昼寝中だったか。三人が居るのに静かだったしな。和むだろ?」
「あー和むな、ありゃ・・・」




ってか、気づいてたんなら静かにしとけよと零せば、さっき気付いたとカラリとした返事が返される。



「それにしても・・・ホント、仲良いな」
「まぁなぁ。何せ、咲ちゃんと蓮華ちゃんは将来閃時君のお嫁さんになるって言う位・・・大、好き・・・」
「自分で言って落ち込むなよ」




その時の事を思い出したのか、膝を抱えて部屋の隅でずーんっと落ち込む近藤に、土方は面倒臭そうに突っ込んだ。



「ってか、あんなに仲が良いって珍しいんじゃねぇのか?」
「そうか?」
「閃時も十五だろ?あの位の年だったら、妹とかあんま構わなくなるもんじゃねぇのか?」
「そう言うもんか?・・・比較対象がいないからなぁ」
「それはそうなんだけどな」




一般論としてだと土方は言葉を付けたし、程好く冷めた茶を啜る。



「まぁ、兄妹仲が良いのは悪い事じゃないだろ?」
「それはそうだけどな」
「閃時君には、親の俺達がやらなきゃいけないような事までやって貰ってるからな。頭が上がらんなぁ」




がははははっと豪快に笑う近藤に、土方は不思議そうな視線を向けた。



「閃時君は二人と一緒に居る時間が長いからな。
褒めたり叱ったりを一番多くこなしてくれてるよ」
「・・・褒めるってのは想像出来るが、叱るって姿は想像出来ねぇなぁ」
「そうか?」
「あぁ、閃時は二人の事猫可愛がりしてるからな。まったく想像出来ねぇ」
「うはははっ!!まぁ、咲ちゃんも蓮華ちゃんもそう閃時君に叱られるような事はせんからな。
でも、叱る時はきっちり叱るぞ?それで二人が泣く事もあったしなぁ」
「益々想像出来ねぇなぁ・・・」
「じゃあ、一個話してやろうか」




そう言ってニヤリと笑った近藤に、土方は興味を擽られて気付けば頷いていた。










真選組局長と言う立場から、近藤は命を狙われたり危険にその身を晒す事が多い。
それから身を守る為に、刀は決して手離す事は出来ない。
それでも、自宅に居る時はほんの少しだけ気を緩める事も許され、刀を寝室の床の間に預ける。
その日は、急に決まった事ではあるが、久々に丸一日休みを取る事の出来た日だった。
朝は、妙の薦めもあってゆっくりと寝過ごし、何時もより一時間以上も遅く起き出した。
居間に顔を出せば、そろそろ起き出す頃だと予想していたのか、妙が近藤の為に遅めの朝餉を用意している所だった。




「おはようございます、お妙さん」
「おはようございます、勲さん。ゆっくりお休みなられました?」
「久々にぐっすり眠れましたよ」




にっこりと笑顔で言葉を返してくれる妙に、幾ばかりの気恥ずかしさを覚えながらも嬉しそうに近藤も言葉を返す。
それならよかったとクスリと笑う妙に、あぁ本当にこの人は俺の奥さん何だなぁと、未だに毎朝のように繰り返し確認して居る事柄に、照れたように頭を掻いた。




「さ、どうぞ温かい内に召し上がって下さいな」
「はい、頂きます」




促されて腰を下ろした近藤は、両手を合わせて朝餉に箸を付ける。
時々失敗する事もあるが、平均並みの腕を手に入れた妙の料理は、視力を低下させる事も記憶を失くさせる事も無い。
稀に、ワザと暗黒物質を創造する事もあるのだが、今はそれは横に置いておく。




「今日の朝餉も美味しいです!!お妙さん!!」
「ふふ、ありがとうございます」




食事の度に繰り返される賞賛に、妙は穏やかに微笑んだ。
と、縁側からトタトタと軽い足音が聞こえ、近藤はそちらに視線を向ける。
ひょこりと現れたのは、近藤家の愛娘・咲だ。




「父様。おはようございますですの」
「おはよう咲ちゃん」




父の姿を見つけてにこりと笑顔を浮かべて、咲は礼儀正しく頭を下げると朝の挨拶を告げた。
近藤も一度箸を止めると、笑顔でそれに応える。
そして、おや?っと目を瞬かせた。




「今日は稽古の日だったかな?」
「違いますですの」




胴着を身に着けていた咲に首を傾げて問えば、咲は首を横に振る。



「道場はお休みなんですけど。新ちゃんが午前中は時間があるからって昨夜連絡があったんです。
午後からは万事屋のお仕事が入ってるみたいですけど」
「あぁ、なるほど。じゃあ蓮華ちゃんも一緒だなぁ」
「はい、蓮華ちゃんも一緒ですの」




嬉しそうに笑う咲に、怪我をしないように頑張るんだぞと笑顔を向けて、近藤はまた箸を動かす。
最後の一口を咀嚼していると、ガラガラと玄関の引き戸が開けられる音が微かに聞こえ、続いて新八と蓮華の朝の挨拶が響いた。




「お?来たみたいだな」
「はいですの」




近藤がそう言えば、咲が嬉しそうに駆け出して行く。
愛娘の嬉しそうな姿に、両親は顔を見合わせるとクスリと笑い合った。











何時もより遅く起き出したせいか、午前中はあっと言う間に過ぎた。
午後から、家事手伝いの依頼が入っていた新八は皆と昼食を共にした後、蓮華を預けて依頼先へと出向いて行った。
妙も、前々から友人と会う約束があったらしく、夕方には戻りますからと言って、二人を近藤に任せて何処か申し訳なさそうに出掛けて行った。
その二人も、今は咲の自室で昼寝をしている。




「久々に丸一日休みになると、何をしていいか分からんなぁー」



昼寝をしている二人の邪魔をしては何だからと、咲の自室から離れた縁側で茶を啜りつつ暢気に近藤は呟いた。
穏やかに降り注ぐ昼下がりの陽光に、あー平和だなぁと日向の猫のように目を細めてさらに呟く。




「俺も昼寝でもしようかなぁー」



縁側に寝転んだら気持ち良いだろうなと思い、実践しようとしたその時。



「こんちはー」



ガラリと玄関の引き戸が開けられ、聞き慣れた閃時の声が響いた。
暫しの間を置いて、軽い足音と共に閃時が近藤の居る縁側に姿を見せる。




「勲叔父さん、こんちは。今日休み?」
「おーこんにちは。久々に丸一日休みになったよ。急だったけど」
「ふーん、そうなんだ。ホント久々だよな」
「久々過ぎて、何をして過ごしていいのか分からんよ」




ははっと笑う近藤に釣られて、閃時もクスリと笑う。



「じゃあさ、後でちょっとで良いから稽古付けてくんない?」
「ん?俺でいいのか?」
「実戦形式で是非とも」




ニヤンっと笑う閃時に、よしっ!!じゃあ相手になってやろう!!と近藤もニヤリと笑い返した。



「その前に・・・二人は?もしかして昼寝中?」
「あぁ、咲ちゃんの部屋で昼寝中だな。・・・そろそろ起き出してるかも知れんがなぁ」
「そっか。じゃあちょっと見てくる」




顎を擦りつつそう告げる近藤に一つ頷いて、閃時は咲の部屋に向かって行った。
それを見送り、近藤は空になった湯飲みを片手に台所に向かう。
ざっと湯飲みを洗って籠に引っ繰り返し、先に道場に向かおうと踵を返したが・・・。




「何やってんだっ!?」



鋭く響いた閃時の声に、パチリと目を瞬かせた。
それは驚きと言うよりも怒りを含んでいて、何事か!?と我に返ると慌てて声のした方へ駆け出す。
向かった先は、夫婦の寝室だった。
午前中に、換気の為にと妙が屋敷中の襖や障子を開け放っており、其処も例に漏れる事無く襖を開け放たれている。
勢いそのまま駆け込もうとしていた近藤だったが、一歩踏み込んだだけで動きを止めて、きょとりと目を瞬かせた。
其処には、近藤に背を向ける形で数歩寝室に足を踏み入れ何故か肩を怒らせる閃時と、その前で肩を竦めて身を寄せ合う蓮華と咲の姿。




「どうして駄目だって言われた事をするんだっ!?」



どうした?と近藤が閃時の背中に問い掛けるよりも早く、再び閃時の怒声が響き渡った。
その声の鋭さと含まれる怒気に怯えたのか、二人はさらに身を縮め、泣き出す寸前のようにくしゃりと顔を歪める。




「どうして駄目だって言われた事をやったっ!?」



それでも、閃時は声を抑える事無く続けて問う。
下手に声を掛けられない雰囲気に、近藤はおろおろと狼狽え、無意味に両手を上げ下げしつつ、何とか状況を読み取ろうと試みた。
そして、二人の足元に、自分の刀が転がっている事に気付いてぎょっとなる。




「大丈夫。まだ抜いてないから。柄を握っただけ」



近藤の様子を背中で読み取った閃時が、唸るような声で呟いて一歩踏み出した。
急に動いた閃時に、二人はビクリと肩を跳ねさせる。
だが、閃時はそれを無視して刀を拾い上げると、近藤を振り返り差し出した。
慌てて刀を受け取り確認するが、閃時の言う通り刀を抜かれた様子は無く、ほっと安堵の息を吐き出す。
どうやら、昼寝から目覚めた二人は開け放たれた襖から覗く刀に興味をそそられて、刀掛けから取り上げたらしい。
それから、ほんの少しだけと言う気持ちで刀を抜こうと柄に手を掛けた所で閃時に見つかったようだ。




「兄様言ったよな?刀は玩具じゃない。絶対に勝手に触っちゃ駄目だって。
二人とも、ちゃんとはいって言ったよな?」




二人に向き直し、低く少しだけ掠れ静かに言葉を綴る声は、先程の怒鳴り声よりも凄みがあり、本格的に閃時の怒気に怯えたのか、二人は同時にひっくっとしゃくり上げた。



「閃時君・・・別に怪我もないみたいだし、そんな・・・」
「勲叔父さんは黙ってろ」
「はい」




怒らなくても・・・と、二人の援護に出ようとした近藤ではあったが、ぴしゃりとした閃時の声音にすぐさま引っ込む。
冷たい汗が一筋、背中を伝ったのは決して気のせいではない。




「黙ってちゃ分からないだろ。どうなんだ?」



怒気にさらに冷気まで加わった声に、ふぇ・・・っと泣き始めの声が重なり、二人はポロポロの涙を流し始めた。
それに、閃時はきっと眦を吊り上げる。




「刀は玩具じゃないっ!!絶対に勝手に触るなっ!!これは兄様との約束だっただろっ!?
大事な約束だった筈だっ!!約束を破るのは悪い事だと知ってるだろっ!?」




頭の上から降って来る叱責に、二人は涙を流ししゃくり上げながらも頷く。


「だったら泣く前に言う事があるんじゃないのかっ!?」
「「・・・いっ」」
「聞こえない」
「「・・・さいっ」」
「ちゃんと兄様に聞こえるように言いなさい」




しゃくり上げる合間に呟くように言葉を綴る二人に、閃時はまたぴしゃりと言い放った。
それに二人はひぃっくと一際大きくしゃくり上げると。




「「約束破って、ごめん、なさいっ!!」」



それだけで精一杯だったのだろう、必死で謝罪の言葉を叫んだ二人は声を上げて本格的に泣き出した。
わんわんっと声を上げる二人に、近藤はただおろおろするばかりで、手に持った刀を握り締める。
その中で冷静だったのは、やはり閃時だった。




「蓮華、咲」



二人の名前を呼んでその場で両膝を突くと、ほらっと言うように両腕を広げて見せる。
一瞬だけ泣き声が止んだかと思うと、二人は弾かれるように閃時の腕の中に飛び込んで縋るように抱き付いて、再びわんわんっと声を上げて泣き出した。




「二人とも、兄様が今から言う事しっかり聞いてくれ」



二人の背中を撫で、時に軽く叩きながら閃時はさっきまでとは打って変わった優しい声で言葉を綴り始める。
ひっくと一つしゃくり上げて、二人は頷いた。




「刀はな。武士の魂って言われる位、大事なもんなんだ。
だから勝手に他人が触っちゃ駄目だってのもある。
でもな。それ以前に武器なんだ。心得の無い者が不用意に触れば、怪我をする事だってある。
兄様な。二人が大切だ。ものすっごく大切だ。だから、怪我なんてして欲しくない」




少しだけ二人から身体を離し、閃時は蓮華と咲の頬を片方ずつ手で覆うと、親指の腹でゆっくりと目尻を撫でる。
その表情は辛そうに歪み左右色違いの瞳が今にも泣きそうに見えて、二人は自分達が本当に悪い事をしてしまったのだと再自覚させられ、くしゃりとさらに表情を崩した。




「兄、様・・・約束破って、ごめんなさい、なのです・・・っ」
「もう、勝手に触ったり、しません・・・ですの・・・っ」
「今度こそ、絶対約束守れるな?」
「「はい・・・」」




ぐすぐすと鼻を啜る二人がしっかりと頷けば、閃時はほっと表情を緩め、もう一度二人をしっかりと抱き締める。



「二人の事信じる。兄様も、怒鳴ってごめんな?」



申し訳なさそうに眉を八の字に垂らす閃時に、二人はブンブンと首を横に振るとおずおずと見上げた。
それに閃時が首を傾げれば、二人は恐々と口を開く。




「「(閃)兄様、(蓮華・咲)の事、嫌いになってませんか?(ですの・なのです)」」



不安げに問う二人に、閃時は一度パチリと目を瞬かせると。



「なる訳無いだろっ!!」



そう叫んで力一杯二人を抱き締め、素早く二人の額に口唇を押し付けた後、ふわりと柔らかく微笑んで見せた。
それにやっと笑顔を見せた二人は。




「(閃)兄様、大好き(なのです・ですの)っ!!」



そう叫び返して、閃時の両頬に同時に口唇を押し付けた。










「意外って言うか・・・むしろ逆に納得だな。そりゃ」
「うはははっ!!そうかっ!!」
「あら、何が『そうか』なんですか?」




ほぉーと感心したように息を吐き出す土方に、快活に笑いながら近藤が相槌を打てば、ちょうど近藤の着替えの用意を持って戻って来た妙が言葉を挟んで来た。
近藤が手短に話せば、後で聞いていたらしく、そんな事もありましたねぇと妙は苦笑う。




「あの後が大変だったわぁ。主に閃ちゃんがですけど」
「大変だったって・・・まだ何かあったのか?」
「いやぁ〜。あの後二人が、何時も以上に閃時君から離れなくなってなぁ。
それこそ雛鳥にでもなったように付いて回ってた」
「ご飯にお風呂、寝るのも一緒・・・までは何時もの事だったけど。
厠に行くのにも付いて回ってて、流石に閃ちゃんも厠だけは一人で行かせくれってお願いしてたわね」




近藤の隣に腰を下ろし頬に片手を当てた妙は、見てる方は微笑ましかったけどと、ふふっと笑った。
まぁ、確かに見てる分には微笑ましいで済ませられるだろうが、厠までも付いて来られる事になった閃時は、本当に大変だったろうぜと土方は苦笑う。




「でもまぁ・・・本当に二人が大切なんだな、閃時は。
二人が年頃になって彼氏でも出来た日にゃ・・・ブリザードでも吹き荒れんじゃねぇのか?」
「それもあるが。二人がお嫁に行く時、一番荒れるのもきっと閃時君だろうなぁ」
「ふふ・・・勲さんも銀さんも、花婿殴る役はきっと取られてしまうわね」




相手の顔こそへのへのもへじだが、怒髪天を突く勢いで相手を殴り飛ばし。



『お前なんぞに俺の可愛い妹をやるかぁあぁぁぁぁっ!!』



と、叫ぶ閃時の姿は容易に想像出来て、三人は小さく噴出した。
同じ頃。
眠る閃時がくしゅんっ!!と、くしゃみをした事など知らずに・・・。
















後書き

『坂田さん一家設定で、妹達が大切が故に心を鬼にして叱るお兄ちゃん。出来たら近妙を絡ませて欲しいです』
な、リクでしたっ!!!
とりあえず、近妙は夫婦な感じを押し出してみましたが(笑)
お妙さんに『勲さん』って言わせる度に、何でか照れました(爆)
妹達は、叱られて泣いても兄様大好きです☆
で、最後の三人の予想ですが・・・そうなったら、確実に殴り飛ばします。兄様。
むしろ、彼氏の時点で殴り飛ばしそうです。兄様(大笑)


雪兎様。
こんな感じで如何でしょう?
蒼月も近妙が好きなので、リクに入れて頂けて本当に嬉しかったですww
実は、妹達が大切が故に心を鬼にして叱るお兄ちゃんと言うのは、何時かやるぞ!!と思っていたネタでもありましたので、スラスラと一気に書き上げる事が出来ました。
何てタイムリーなリクッ!!と、一人喜んでいましたよ(笑)
企画参加本当にありがとうございました!!
お気に召して頂ければ幸いです(*- -)(*_ _)ペコリ

2009.06.22