051.くちづけ
052.手紙
053.おやつ
今日は何の日?・・・と。にっこりと新八に問われ、銀時は目を瞬かせた。
日めくりカレンダーに視線を向けるが、特に何かある訳ではない。
今月は、国民の祝日が二日程あるが、神楽の誕生日でもある11月3日の文化の日は別として、11月23日の勤労感謝の日は銀時には何の関係も無い日である。
むしろ、テメェが感謝して働けコノヤローな日だ。
・・・少し話が逸れたので元に戻そう。
銀時は一度新八に視線を戻して、再びカレンダーに視線を向ける。
今日の日付は11月14日。
二日ある国民の祝日はまったく関係ない。
11月14日・・・11月14日・・・。
ブツブツと呟きながら考える。
新八がにこにこと笑いながら答えを待っているので、出来るなら答えたい所だが、心当たりの無い銀時は頭を掻いた。
もう一度11月14日の声には出さずに呟いて、あっと小さく声を上げる。
「分かりました?」
「おうよ。今日はパチンコの日じゃねぇかぱっつあん」
「今日は何の日か分かりました?銀さん」
「あれ!?銀さん今答え言ったよね!?」
自信満々で答えたモノをばっさりと切り捨てられて、銀時は慌てる。
これでは、パチンコの日を名目に意気揚々とパチンコに出かける事は出来ない。
と、言うか・・・新八の目が笑ってないので、これ以上パチンコと言う単語を口に出す事は命に係わりそうだ。
「分かりませんか?」
「うん」
「そうですか。じゃあ・・・神楽ちゃーん」
「はいヨー」
コトリと首を傾げながら問われ銀時が素直に頷けば、新八は和室に向かって声をかけた。
それに応えたのは呼ばれた神楽だ。
行儀悪く襖で足を開けたのは不精した訳ではなくて、両手いっぱいにお菓子を抱えて・・・。
「ちょぉおぉおおぉおぉっ!!神楽っ!!それ銀さんの隠し糖分んんんんんっ!!!」
見覚えのあるお菓子の数々に銀時はカッと両目を開いたかと思うと、奪い返すべく神楽に飛び掛った。
が、ひらりとそれを避けるが早いか、神楽は両手にお菓子を抱えたまま新八の背中の後ろに逃げ込む。
「くぉらぁぁあぁぁぁあっ!!神楽ぁあぁぁぁあぁぁっ!!!」
「銀さん」
「ぅおっ!?」
まさに鬼の形相で振り返った銀時だが、振り返った瞬間ビシリと新八に指を突き付けられて思わず仰け反った。
そんな銀時に、新八はにっこりと笑い掛ける。
「今日は何の日でしょう?」
問う新八の目は、やはりにこりとも笑ってはおらず・・・銀時はゴクリと唾を飲み込んだ。
「正解は・・・世界糖尿病デーだごらぁあぁあぁぁぁっ!!!アンタ真面目に危ないんだからちょっとは気を付けろやぁあぁぁっ!!!」
「ぎゃぁああぁぁぁあぁっ!!!!!」
何時の間にか突き付けられた指が二本に増えたと思う間もなく、新八の怒声と共に鼻フックデストロイヤーが決り、銀時は華麗に宙を舞う。
「この隠し糖分は、神楽ちゃんのおやつにさせて頂きます」
そんな新八の言葉は、べしゃりと音を立てて顔面から床に落ちた銀時の耳には届かなかった・・・。
END
一日遅れましたが、11月14日は世/界/糖/尿/病/デーでした。
パチンコの日も本当ですよ☆
そんで、今日11月15日は「い(1)い(1)ゆい(1)ごん(5)」の語呂合せの日だそうです(笑)
2008.11.15
054.散歩 (坂田さん一家)
055.花火
056.さらさら
もっとずっと。
新八の髪は羨ましい位にさらさら。
万事屋に泊まった翌日、少し寝癖が付いていても何度か指を通しただけで直せる位に。
俺なんか、どっからどこまでが寝癖で、どっからどこまでが癖毛なのか分からねぇくれぇなのにな。
ホント羨ましくて仕方ない。
でも、それ以上にその髪に触れるのが好きな自分が居る。
風に煽られてさらさらと揺れる髪を見るのが好きな自分が居る。
その髪に触れる事を、その風に揺れる髪を見る事を飽きる事なんてきっと無いんだろうなって思う。
もっとずっとそうして居たいとさえ思う。
新八の姉のお妙より、触れた回数や揺れる髪を見た回数が勝ってるとは思っちゃいねぇ。
でも、これからこの先。
それに勝る位に触れて見てやろうと決めた。
だからさ、新八。
銀さんの傍に、もっとずっと居てよ。
END
羨ましいけどそれ以上に愛しい存在。
2008.09.07
057.家族
058.背中合わせ (銀新)
この位当然です。
「あ、そうだ銀さん。今日の晩御飯何が良いですか?」
ふと湧き上がった事を、新八は脳内できちんと処理する前に音に変えた。
気付けば毎日毎食の食事を作る嵌めになっている新八は、冷蔵庫の中身と特売品によって独断でメニューを決めるが、ある程度懐に余裕がある場合は希望を聞く。
大抵は銀時だ。
これは別に銀時の希望する物を多く作りたい・・・と言う事では決して無く、神楽に聞けば卵掛けご飯かお茶漬けと言う返事しか返って来ないせいだ。
料理が面倒な人間なら、まぁそれで良いかとなるが、新八は何だかんだ言いつつも料理をするのは嫌いじゃない。
何よりも、自分が作った物を美味しいと言って食べてくれる二人の姿を見るのが好きだった。
「あーらら、新ちゃんってばこの状況で超余裕ぅ」
「超とか言うなオッサン」
「酷くね!?それ酷くね!?」
すぱっと切り捨てる新八に、銀時が一歩下がる。
それに合わせるように新八も一歩下がれば、トンっと互いの背中が触れ合った。
そして、触れ合った背中を軸にするように反転するとお互いの位置を入れ替える。
同時に右腕を振り切れば、蛙でも踏み付けたようなひしゃげた悲鳴が上がった。
今二人は、万事屋の事務所兼居間に居る訳でも、買出しで頻繁に足を運ぶスーパーに居る訳でもない。
目の前には、逃がすものかとじりじりと迫って来る大人数で出来た壁。
迫って来る人壁はそれぞれ武器を持ち、ギラギラと殺意で瞳をぎらつかせている。
些細な依頼が大事に発展するのは、今に始まった事じゃないと二人は些かうんざりしたような表情を浮かべた。
「何イチャついてるアルか!!さっさと済ませて帰って飯にするネ!!」
「こら神楽ちゃん!!女の子が飯とか言わない!!ご飯って言いなさい!!」
銀時と新八を囲む輪の向こうで、人がおもちゃのように投げ飛ばされる中心には神楽が居る。
新八の突っ込みに、ごめんヨ!!マミィ!!と神楽が笑った。
勿論、マミィじゃないから!!僕男だから!!と再度の突っ込みは忘れられる事無く入れられる。
「ほーんと、新ちゃんってぱ超余裕だねぇ。この状況でもそんだけ軽口叩けるんだから」
「何言ってんですか」
タタンとステップを踏むようにまたお互いの位置を入れ替えて、幾人かを握り締めた木刀で薙ぎ払うと、そのまま鋭く踏み込む。
ある程度撃退すると、二人は再びトンっと軽く背中を触れ合せた。
「この程度の状況で軽口叩けないんじゃ、アンタの背中を預かる意味がないでしょ?」
軽く肩を竦める新八を背中で感じて、ぶはっと銀時は噴出した。
「そりゃ、ちげぇねぇ!!」
ゲタゲタと珍しく声を上げて銀時は笑うと、今日の晩飯肉じゃがな!!と叫んで踏み込む。
背中で、了解しましたと新八の返事を聞きながら・・・。
END
必ず来る未来の話。
2008.09.07
059.海辺
060.ぬくもり
きゅうっと腕に力を込めたら、背中に回った二本の腕がよしよしと撫でてくれる。
さらにきゅうっと力を込めて、肩口に額を摺り寄せた。
背中を撫でてた手の一つが頭に移動して、良い子良い子と優しく撫でてくれる。
じんわりと自分の身体に、自分のじゃない体温がじんわりと染み込んだ。
新八と小さく名前を呼べば、はいと優しく返事を返される。
あぁ、温かい。
体温も、答えをくれるその声も。
温かい。温かいな。
ずっと、誰かにこうやって包み込んで貰いたかった。
そんな事望んじゃ駄目だと思っていたのに、お前は何の戸惑いも無く包み込んでくれた。
お前は気付いているんだろうか。
それがどれだけの幸せをくれているか。
気付いていなくても良い。
知らなくても良い。
ただ、一つだけ知っていて。
俺はお前を失いたくないと言う事だけを。
どうか、誰もこのぬくもりを俺から奪わないでくれ。
END
グズグズ坂田。悪夢でも見たか。何か事件でも起こったか・・・。
2008.10.18