011.ピクニック
2009年10月18日〜2010年02月10日拍手お礼小説に使用。
「新八ぃ〜」
「ん?どうしたの?」
歌うと音痴な新八だけど、トントンっと包丁のリズムは何時も上手。
それを聞いてるのが好きだけど、どうしても気になった事があったので声を掛けた。
包丁の音が止むと同時に、首を傾げながら新八が振り返る。
「アッキナーの七臭いって何ネ?」
「アッキナーの七臭いって何!?」
「オババが言ってたネ。そろそろアッキナーの七臭いの時期だねぇ〜って」
「あぁ・・・秋の七草の事か。そう言えば、もうそんな時期だね」
どうやらまた言い間違えたらしい私の言葉を訂正して、新八は合点が行ったのか頷く。
今度は私が首を傾げていると、覚えてる?と問われた。
「お正月に、春の七草粥食べたでしょ?それの秋版の事だよ」
「じゃあ、食べられるアルカ!?」
「あー・・・秋の七草はね、観賞用の方になるから食べるのは無理だよ」
「そんなのつまんないネ」
「いや、つまるつまらないの代物じゃないからね?」
食べられないと聞いて唇を尖らせる私に、新八は苦笑ってまた包丁で食材を切り始める。
「芹・薺・御形・繁縷・仏の座・菘・蘿蔔・・・これが春の七草。
女郎花・尾花・桔梗・撫子・藤袴・屑・萩・・・これが秋の七草。
春の七草みたいに、無病息災を願ってお粥を食べたりって行事はないんだけどね。
秋の野の花が咲き乱れる野原と『花野』って言って、それを眺めて楽しむんだよ」
「ふーん・・・。それなら、春の七草の方がお得アル」
やっぱりつまらないとさらに口唇を尖らせれば、そうだ!!と新八が楽しそうな声を上げた。
「明日、二人で秋の七草探しに行ってみようか?」
「ふぇ?」
「どーせ銀さんは、明日二日酔いで一日グダグダしてるだろうからね。
お弁当持って、二人で行ってみない?」
金もねぇのに飲み歩きやがってあの天パァァアァァアッ!!と、言葉にされてない筈なのに聞こえた声はあえてスルーして、ぱっと私は表情を輝かせた。
「ピクニックアルカ!?」
「うん、ピクニック。おっきなお握りと水筒持って、秋の七草探しのピクニック」
「きゃほぉおぉおぉおぉぉっ!!行くヨ!!行くアルー!!あ、定春も一緒ネ!!」
「そうだね。定春も一緒に」
「楽しみネー!!」
ぴょんぴょん跳ねる私に、新八も楽しそうに笑って頷く。
「あ、でも。秋の七草どんなのか知らないアル」
「じゃあ、ご飯食べたら僕の家に行こうか?確か植物図鑑があったから。
で、そのまま泊まっちゃいないよ」
「名案アル!!お泊りの用意してくるネ!!」
「定春の餌も忘れないようにね」
「はいヨー!!」
新八の言葉を背に受けながら、急いでお泊りの準備をする。
銀ちゃん残念。新八が駄目って言うのにこっそり飲みに行ったりするからネ。
明日の夕方。戻って来た私達の話を聞いて悔しがる銀ちゃんの顔を想像したら。
キヒヒッと意地の悪い笑みが零れた。
END
基本的に親父は除け者です☆☆-(ノ゚Д゚)八(゚Д゚ )ノイエーイ
2010.02.10
012.おめかし (坂田さん一家)
013.そよ風 (坂田さん一家)
014.おそろい (坂田さん一家)
015.青空
016.きらきら (拍手)
2008年10月15日〜2008年12月2日拍手お礼小説に使用。
いや、なんつうかさぁ・・・俺、ホントやばいかも。
もう、マジで糖尿予備軍卒業なんじゃねぇかなぁ・・・。
あ?いや、この間の検診じゃ、血糖値ちょっち下がってた。
医者にも誉められたんだけどさぁー。
目がねぇー可笑しいんだよ。
目がさぁー。
は?何?この指何本?って、三本でしょ?
いやいやいや、見えなくなったとかじゃなくてさぁー。
目がチカチカすんだよ。
チカチカってか、キラキラ?
何時も通り死んだ目?ちっげぇよ馬鹿!!!
死んだ魚のような目!!!魚のようなが抜けるととんでもない言葉に代わるからね!?
じゃなくて!!!俺の目がキラキラしてんじゃなくて!!!
こう・・・なんつうの?キラキラ見えんの。
光りでも背負ってんの?って感じで。
今?今は普通。
てか、そう見えんの特定のもん見た時だけ何だよ。
え?何見た時だって?
んー新八ぃ。
最近、あいつ見るとキラキラして見えんだよ。
別に光りが当たるような所に居る訳じゃないのにさぁー。
特によ?笑ってる時に見ると俺、マジで目ぇ潰れんじゃねぇの?って位きらきらして見えんの。
でも、何でか目が離せないんだよなー。
何でだと思う?
って、溜息吐くなよー。辛気臭ぇなぁーもー。
そんなんだから奥さんに逃げられんだよアンタ。
あー・・・ホント何でだろうなぁ・・・。
END
新ちゃんが好きだけど、無自覚な銀さん。
うだうだ語る事を聞かされる長谷川さん。
屋台か居酒屋で集られてるんだぜ!!!(笑)
2008.12.02
017.お買い物 (坂田さん一家)
018.手づくり
019.そっと
最近・・・銀さんが変だ。
いや、常識から考えればあの人は十分変なんだけどね?
そう言う事は置いといて・・・普段に比べて変。
本当は、もっと別の言い方があるかもしれないけど、しっくり且つ簡単に説明出来るのが『変』の一言だった。
何か見られているような気がして、こっそりと視線をそっちに向けると必ず銀さんが居る。
でも、視線は全然違う方向を向いてるから気のせいなのかもしれないけど・・・。
二人しかいない居間で視線を感じたら、銀さんだとしか思えない。
用事がある・・・って感じでもないし、暇だからパタパタと動き回ってる僕を見てるだけかもしれないし。
ってか、暇なら手伝えよ!!と、言い掛けてやっぱり止めてしまう。
何故なら。
僕、何かしちゃったかな?
と、逆にこっちが悪い事をして気付いてないような気にさせられるような、銀さんの物らしい視線はチクチクとしているからだ。
もしかしたら、無意識で銀さんの気に触るような事を僕がしでかして、僕の存在自体を疎ましく思ってるんだろうか・・・。
直接は流石に言えないから、視線で気付けって事なの?
僕は、銀さんに嫌われてしまったんだろうか・・・。
例えそうだとしても、問えない言葉をそっと溜息に混ぜ込んで吐き出した。
NEXT→097.ひみつ坂田の熱視線を勘違いしてしまった新八君。
坂田コラッ!!(待て)
2008.12.31
020.ひなたぼっこ
「おはようございます」
何時もの時間、何時も通りに出勤。
何時もなら、台所に入る前に神楽ちゃんに声を掛けるが、昨日から姉上の職場の慰安旅行に付いて行っているので玄関脇の押入れを立ち止まらずに通り過ぎる。
肩に掛けていた荷物を置いて、朝食の支度の前に銀さんを起こしに掛かった。
「おはようございまーす。朝ですよー。起きて下さーい」
襖を開けて声を掛けながら、こんもり小山を作る布団を跨ぐ。
閉めていた障子を開けて窓も開ければ、ひんやりした清々しい朝の空気が流れ込んで来た。
モソモソと動き出した小山を振り返り、腰に手を当ててもう一度声を掛ける。
「ほら、起きて下さい!!朝ですよー!!」
声を掛けると言うよりは怒鳴ってやれば、布団越しにくぐもった唸り声。
あーあー本当にもう・・・。
少しは神楽ちゃんを見習って欲しいもんだ。
溜息一つ零して、布団の縁に手を掛ける。
すっと息を吸って、でぃやっ!!と勢い良く両腕を振り上げた。
今日は良い天気なんだから、布団干させろこのマダオ!!
そう怒鳴ってやろうと思った。腹の底から。
だけど、息を吸い込んだだけで、僕の口から怒鳴り声は愚か、言葉一言出ては来ない。
いやいや・・・だってそうなるよね?そうならないと可笑しいよね?
布団を剥がれた事で寒さに身を丸める三十路一歩手前にさ?
猫耳と尻尾が生えてたら、普通そうなるってもんでしょう?
「・・・で?何を拾い食いしたんですか?糖分か。糖分なのか」
「拾い食い何かしねぇよ!!俺だって吃驚だわっ!!」
ジト目で目の前のソファに座る銀さんへ視線を向ければ、噛み付くように言い返される。
はっ!!どうだか!!糖分に目が無い銀さんならありえないとは言い切れないからね!!
はんっと鼻を鳴らせば、ぶすっと銀さんは表情を顰めてそっぽを向いた。
ついでにぶわっと膨らんだ尻尾が、バシリと不機嫌そうにソファを叩く。
あ、あれ動くんだ。
妙な感心をして見詰めていれば、気付いた銀さんが益々不機嫌そうに見るんじゃねぇと尻尾を背中に隠した。
頭隠して尻隠さず・・・いや、この場合。
尻尾隠して耳隠さずだな。
ピクリピクリと動く猫耳が、こんな状況にも関わらず何だか微笑ましく思えた。
三十路一歩手前のオッサンにくっ付いていると言うに、可笑しい感想だとは思うけど。
正直そう思ったんだから仕方が無い。
思わず零れそうになる笑いを堪えていると、あっ!!と銀さんが声を上げた。
「菓子!!」
「はぁ?」
「だから菓子だよ!!坂本から送って来た菓子!!俺、それ食った!!」
解決の糸口を発見したと珍しく瞳を煌かせた銀さんに、僕が相槌を打つ前にしなきゃいけない事と言えば。
「食ったのか。糖分食ったのか」
ぼそりと呟いて立ち上がる。
しまった!!と銀さんは慌てるけどもう遅い。
逃げられる前にダンッ!!と行儀は悪いけどテーブルの上に足を乗せ、ガッと胸倉を掴んでやった。
ぐいっとそのまま引き寄せれば、完全に銀さんの目は泳いでいる。
「で?食ったのか?」
「いや・・・あの・・・その・・・」
「食ったのか?」
「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・はい」
もごもご呟くのをばっさり切り捨て三度問えば、観念したのか小さな小さな声で返事が返って来た。
その後、問答無用で僕が銀さんを投げ飛ばしたのは言うまでは無いだろう。
結局、原因はやっぱり坂本さんから送ってこられた菓子が原因だった。
ゴミ箱の奥に捨ててあった空箱を発見しました。
ってか・・・。
箱に注意書きあったからね?
地球人の方は、何かしら影響でます的な事。
動物の耳とか尻尾とか生えますって思い切り書いてたからね、アレ。
影響は一日程度で収まるらしく、それに安堵したと同時に自業自得だと言ってやった。
ぺしゃんっと力なく伏せた耳と尻尾が、少し可愛いと思ったのは内緒の話。
まぁ・・・今日一日家で大人しくしてれば、余計な騒動に巻き込まれる事もないだろう。
特売があるから原付出して欲しかったけど、この際仕方ない。
洗濯と掃除を済ませて、和室で繕い物をしながらこっそり溜息を吐いた。
「で・・・何やってんですかアンタ」
「何って・・・昼寝」
「そーじゃなくて!!何で態々移動して来てんの!?
ってか、何で僕が膝枕しなきゃなんないのっ!?」
のっそりとやって来た銀さんが、さも当然の事のように人の膝を枕にゴロリと寝転がったのでそう怒鳴ってやれば、猫耳が煩そうにパタパタと動く。
何で僕が悪いみたいな態度取られなきゃなんないの。
「猫は膝枕で寝るもんだろーが」
「知らねぇよ!!邪魔だから退けっ!!」
「いーやーんーっ!!」
「キモイッ!!可愛くないっ!!鳥肌が立つっ!!」
膝の上の頭を押し退けようとすれば、がっちり腰にしがみ付かれた。
「ちょっとっ!!針が刺さんでしょーがっ!!」
危ないと続けて怒鳴っても、腰に回った腕が緩む事はない。
それ所か、何処か機嫌良さそうにパタパタと耳を動かし、ゆらりとふわふわの毛で覆われた尻尾が揺れた。
何コレ・・・。何なのコレ・・・。
膝枕が嬉しいのか。そうなのか。
男の膝枕だぞ。固いだけだぞ。気持ち良く何かないでしょーが。
ぶつぶつ・・・音にはせずに胸の内で呟けば、ゴロゴロと微かに銀さんが喉を鳴らした。
何なの・・・ホント何なのこのオッサン。
隠れて糖分食うわ。
その糖分のせいで猫耳尻尾生やすわ。
挙句の果てに人の膝を枕に昼寝ですか。
全く持って良いご身分だな、おい。
一発殴ってやろうかと左手を振り上げたけど、相変わらず耳はパタパタ尻尾はゆらゆら。
微かに聞こえる喉を鳴らす音は、ご機嫌そのもので・・・。
殴る気力さえ根こそぎ奪ってくれる。
あーあーコンチクショー。
一度でもこの姿を可愛いと思った僕は、最初から負けていたのかと隠す事無く大きな溜息を吐いた。
だけど簡単に負けを認めてしまうのは癪で、右手に持っていた針を針山に戻してペチンッとふわふわな頭を叩いてやる。
イデッ!!と上がった悲鳴に少しだけ気を良くして、叩いた其処をくしゃりと撫でた。
ピンッと立ち上がった猫耳の後ろを擽ってやれば、パタパタと忙しなく動く。
ゴロゴロと、聞こえる喉の音が少しだけ大きくなった事に僕はこっそり笑みを浮かべた。
銀さんに、猫耳と尻尾が生えただけで。
結局やってる事は何時もと同じだと気付いたのは、翌日の事でした・・・。
END
絵茶会に参加中に制作しました第二弾(笑)
最近、某方のおかげで猫銀に嵌り中。
この時、お世話になった方に捧げさせて頂きました!!
心当たりのある方、どうぞお持ち帰り下さいませ!!
2009.10.11(早朝)作成
2009.10.12UP