001.ひとり

2008年9月1日〜2008年10月15日拍手お礼小説に使用。





一人で良いと思ってた。
一人が良いと思ってた。

だって、この手は沢山のモノを掴み損ねて、俺は無力なんだと嫌でも突き付けられていたから。
大事なモノ何か作ってどうすんだ。
大事なモノ何か手に入れてどうすんだ。
無力なこの手はボロボロボロボロまた取り零すって言うのに。
でも駄目だった。

一人は寂しいって思った。
一人が寂しいって思った。

何でかって?
そりゃアイツ等のせいじゃねぇか。
最初に、眼鏡が勝手に飛び込んで来た。
次に、胃拡張娘が勝手に飛び込んで来た。
最後に、馬鹿デカイ狛犬が飛び込んで来た。
勝手に飛び込んで来たもん、どうやって振り払うよ?
ほら、な。
出来やしねぇ。
アイツ等、俺の傍でケタケタ笑うんだもん。
勝手に人の手掴んで。

銀さん。
銀ちゃん。
わん。

って、俺の事呼ぶんだもん。
返事しなかったらずっと。

銀さん!
銀ちゃん!
わん!

って、飽きもせずに呼ぶんだぜ?
煩過ぎて無視も出来ない。
だから、俺も応える。

何よ?新八。
何だよ?神楽。
どうした?定春。

そしたら、ニヒッと笑う。
そんな顔されたらもう駄目だって思うだろ?

もう一人になんか戻れない。
もう一人でなんか居られない。
もう一人が耐えられない。

あーもーチクショー。
腹括ってやろうじゃねぇの。

コイツ等だけは、絶対に掴み損なわない。
コイツ等だけは、絶対に取り零さない。
全身全霊掛けて護ってやろうじゃねぇのっ!!!










END





開き直ったマダオは最強(笑)
愛妻と愛娘と愛犬が大事でしゃーないのが、此処の銀さんの基本です(爆)

2008.10.18
























002.おはよう





目が覚めて、一番に告げる事の出来る言葉。





窓ガラスを透かして差し込む朝日に顔を照らされて、銀時は眩しさからぎゅっと眉間に皺を寄せた。
眩しさから逃れようとするかのように緩く首を振って枕に顔を擦り付ければ、枕とは違う感触が顎先を擽る。
ふわふわ・・・とは違う。
言うなればさらさら。
良く知るその感触に、銀時は小さく唸るととろりと両目を開いた。
ぼんやりとした視界の先には、投げ出した自分の右腕。
緩く自然に曲がった指先を握り込めば、ピリピリと痺れが走る。
痺れが、まだ半分眠っていた意識を浮上させた。
鮮明になる意識が、周りの状態を知らせる。
普段なら、この部屋に響く呼吸音を銀時一人分。
だが、今朝は銀時の呼吸のリズムとは違う、もう一人分の呼吸音。
それが聞こえるのは直ぐ近く。
銀時の胸元から。
そろりと視線を向ければ、視界を埋めるのは呼吸音と一緒にサラサラと揺れる黒髪。
へらりと、銀時の表情が弛む。
今、銀時がその両腕に抱え込むのは大事なモノの中でも特別大事なモノ。
まだ痺れの残る右腕をそろそろと動かして、腕の中のモノをぎゅうっと抱き込む。
何処か甘い香りのする黒髪に鼻先を埋め込んで、銀時はくふんっと満足気に鼻を鳴らした。



「温っけぇ・・・」



グルグルと喉を鳴らしそうな程にご機嫌な様子で銀時が呟けば、もぞりと腕の中で動く気配。
少しだけ腕を緩めれば、ゆるりと持ち上がる頭。
顔を覗き込めば、まだ夢心地な黒い瞳が銀時を映す。



「銀さん・・・?」
「うん、銀さんだよ。新八」



不思議そうに問うて来る新八ににへっと笑って銀時が応えれば、新八も釣られたように笑みを浮かべた。



「新ちゃん」
「はい?」



おはよう。



ひそと耳元で言葉を零されて、新八は擽ったそうに首を竦める。
擽ったさを振り払うように銀時の胸にグリグリと額を擦り付けた後。



おはようございます。



と、銀時の鼓膜を新八の囁きが振るわせた。










END





娘はマミィの実家(笑)にお泊りでした(爆死)

2008,09,01




















003.はじめて


2009年04月14日〜2009年05月01日 拍手お礼小説に使用。





夜寝る時に、そろそろ毛布は必要なくなり、掛け布団だけで十分になって来た。
まさに『春眠暁を覚えず』な季節。
新八からは。



「アンタ春関係ぇねぇから。年中無休で暁覚えずだから」



と、冷たい視線と突っ込みを入れられた。愛が見えないっ!!
まぁ、それは置いといて・・・とにかくだ。
春の夜は一年の中でも一番眠りやすい。
布団に大の字で眠る事も出来る。
けど・・・冬の夜の方が実は好きだったりするんだな、コレが。
新八が泊まった夜、寒いからと新八の布団に潜り込んでも文句を言われはするが、追い出される事は滅多に無い。
幾らお子様体温と言えども、冬の夜の寒さは堪えるからだ。
だから、俺も遠慮なくパズルのピースのようにぴったりと丁度良く腕の中に納まる新八を腕に抱いて眠る事が出来る。
そうすれば、冬の寒さに刺激されたように思い出される悪夢はすっとなりを潜めるのだ。
俺はただ、腕の中の温かさだけを感じながら眠れる。



なぁ、新八・・・。



オメェは知らねぇだろうな、コレがどんだけ凄ぇ事か。
俺が、他人の気配が傍にあって本当に眠る事何て一度も無かったなんて、知らねぇだろう。
初めて何だよ。
他人の気配に安心するなんて。
他人の体温を愛しく思うなんて。



なぁ、新八・・・。



オメェのこのまだ小せぇ身体の中には、どんだけ凄ぇもん詰め込んでんだよ?
初めて何だよ。
誰かを手離せないと思うなんて。
誰かを自分の傍にずっと留めようとするなんて。



なぁ、新八・・・。



初めて何だよ。



恋なんて。



イイ年こいたオッサンに、何て感情を植え付けやがったんだよチクショー。
責任取って嫁いで来やがれコノヤロー。











END





坂田が恥ずかしい人になってます(おい)
2009.05.01




















004.笑顔





新八が笑顔を見せなくなった。
と、言っても笑わない訳じゃなくて・・・なんつうの?
こう・・・見てるこっちが嬉しくなったり幸せになるような、ふわんっとした笑顔がなくなった。
代わりに、少し困ったような・・・見ようによっては泣くのを耐えてるようなそんな笑顔が増えた。
え?ちょ・・・何で?
何でそんな笑い方ばっかすんの?
神楽もそれに気付いてるのか、不安そうな表情を浮かべるようになってる。
しかも、それを俺に向ける。
いやいや、銀さんにそんな表情を向けんなよ。
何か泣きたくなるからぁあぁああぁぁっ!!
・・・なぁ、新八。
何で?何でそんな笑顔しか見せてくんないの?
前みたいに、見てるこっちが嬉しくなるような幸せになるような、ふわんとした笑顔見せてよ・・・。










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坂田は辞書で自業自得と言う言葉を引くべき。
蒼月は辞書で穏やかと言う言葉を引くべき(爆死)
2009.04.29




















005.ともだち










006.ほのぼの(坂田さん一家)










007.木漏れ日




















008.は
んぶんこ





はいっと、突然新八に両手を差し出されて目を瞬かせた。
俺は今、何も手に持っていない。
でも、新八は何かを渡せと言うように両の手の平を上に向けて手を差し出したままだ。
意味が分からなくて、何?と首を傾げれば。



半分下さい。



と、笑う。
何を?とさらに問えば。



アンタが抱え込んでる、痛いとか辛いとか哀しいとかそう言った物を、半分下さい。



と、さらに笑った。
だから俺は、駄目だお前にはあげられないと応える。
だって、半分でもお前には重過ぎるから。
そう新八に言ったら、心配ないネと言いながら神楽が新八の背中からひょっこりと顔を出した。



銀ちゃんが新八に半分渡したら、今度は新八から私が半分貰うネ。
それならね、僕達きっと片手で持てると思うんです。ちょっと重いかもしれないけど。
銀ちゃんに残った分は両手で持つんじゃなくて、背負えばヨロシ。
そしたらね、銀さんの両手が空くでしょ?僕達は片手が空いてるから手を繋げる。



駄目だって。お前達じゃ重くて歩けなくなるから、これは俺がずっと持ってるよ。
困りながらも二人の手をやんわりと拒絶すれば、そんな拒絶など知るものかと、二人は笑った。



大丈夫ですよ。
だって、手を繋いでるアル。
歩けなくなったら、少しだけ手を引っ張って下さい。
私達みんな、負けず嫌いヨ。
何クソっ!!って、また歩き出せるんですから。



でもな、三人同時に歩けなくなったらどうすんの?誰も手を引っ張れないだろ?



そしたら、ちょっと休憩ネ。
三人並んで腰掛けて、くだらない話でもしましょう。
そんで、また一緒に歩くアル。





だからはんぶんこ。





そう言いながら笑って差し出される手は、俺よりもずっと小さいのにやけに力強く見えた・・・。










END





えーっと・・・。
雰囲気だけでも読み取って頂ければ幸いですil||li _| ̄|○ il||li
2008.12.07




















009.まんまる





あれから、新八に何かあったのかとさり気なく探りを入れてみたけど、分かんねぇ・・・。
ホント、何があったんだよ?
俺等には言えない事なんかよ?
あーもーイライラするってか、悲しくなって来たっつーのコノヤロー。
こうなったら直球勝負するか?やっちゃうか?
でもなぁ・・・新八の性格からして、そう素直に話すとは思えねぇし。
どうせ、困ったような力ない笑顔浮かべて『何でもないですよ?』って言うに決まってんだよ。
はぁああぁぁぁ・・・こんなんじゃ、告るとか無理そうだよホント。

いや、別に諦める気なんかさらさらないけどね?

やっぱさ、そう言うのは他に悩み事が無い時にしなきゃ駄目じゃね?
銀さんの事だけを考えて欲しいしね?
ってかもうさー駄目だわ。
計画立ててじっくり時間掛けて落としてやろうって思ってたけど、そんな余裕ねぇもん。
嫌われてるとは思わない・・・ってか、嫌ってたら先ず万事屋に律儀に通って来ねぇだろ?
ぶっちゃけ、職場としては最低最悪だもん。
それでも律儀に通って、毎日クルクルと家事をこなしてくれんだもん。
少なくとも、嫌いな人間の為に其処までしないだろ普通。
ただ、それは家族愛的な物だろうけど。
とりあえずはあれだ。
先ずは、新八の現在進行形の悩みを取り除いてやらなきゃどうにもならん。



新八のまんまるな後頭部を見詰めながら、ダラダラそんな事を考えた。










NEXT→?





考える暇があんなら行動に移せ、坂田コノヤロー(お前が言うな)

2009.05.12





















010.洗濯日和

2010年02月10日〜拍手お礼小説に使用。