006.ほのぼの





カチャカチャカチャ。
硬質な何かがぶつかり合う小さな音に、新八は家計簿を付ける為に俯けていた顔を上げた。
上げた視線の先には襖が開け放たれている為に見える和室の中。
胡坐を掻いた銀時の膝の上に、ちょこりと座った閃時が何やら一生懸命に手を動かしていた。
どうやら、音の発信源は閃時らしい。
手を動かすたびにカチャカチャカチャとする音が何よりの証拠だ。



(何やってんだろう?)



カチャカチャカチャと、休む事無く響く音に新八は首を傾げた。
やけに夢中になっているからおもちゃの類だとは思うが、掌に納まってしまうような小さな物は飲み込んでは大変と買い与えていない筈。
しかし、何処か閃時が楽しそうにしているのでおもちゃの類で間違いは無さそうなのだが・・・。



(知恵の輪・・・とか?)



最近また、色んな形状の物が出て密かなブームが起きている事を思い出し目を瞬かせる。
小さな物だが、銀時が見ているなら口の中に入れるような危険は無いだろうと、ふっと小さな笑みを浮かべた後、新八は再び家計簿に視線を戻した。
最近は銀時もそこそこ真面目に働いてくれているので、赤字が減って黒字が増えた家計簿を付けるのはかなり楽しい。
最後の欄まで書き終わり、満足そうな息を吐いてパタリと家計簿を閉じるのと、カチンと小さな音がするのは同時だった。



「ちちうえ、できた」
「おーすげぇすげぇ」



顔を上げて再び和室に視線を向ければ、得意気に手の中の物を掲げて銀時に見せる閃時と、よしよしとその小さな頭を撫でる銀時の姿。



(知恵の輪、解けたんだ)



仲の良い父子の様子に、新八は自然と表情を綻ばせる。
が・・・。



「これで、南京錠は何時でも鍵無しで開けられるな」
「って、子供に何教えてんだコラァアアァァアアッ!!!」



銀時の吐いた台詞に、怒声+湯呑みアタック+般若の形相をお見舞いしたのはその直ぐ後だった・・・。










END





何がほのぼのって・・・。
父子の関係がだと思います(何?)
閃時はピッキングスキルを手に入れた!!(チャラチャラッチャラーン)
2008.11.12




















045.ぽろぽろ





まだ昼寝から覚めるのは少しばかり早い時間ではあったが、和室で二枚の座布団を敷き布団にして、水色地にポップなクマのイラストが描かれたブランケットを掛けられていた閃時はぱかりとその両目を開いた。
眠そうな目を瞬かせてふぁっと欠伸を一つ零すと、こしこしと小さな手で目を擦りながら隣に視線を向ける。
常ならば、父親の銀時も隣で眠っている筈なのに、其処にその姿はなかった。
念の為に逆隣にも視線を向けてみるが、やはり居ない。



「ちちうえ」



ぽつりと小さく呟いて、閃時は完全に目覚めていない身体をふらふらと左右に揺らしながら立ち上がった。
カタカタと音を立てて襖を開くと、和室から居間へと足を踏み出す。
ペタンペタンと、素足で床を踏む独特の音を立てながらソファを回り込むと、ぱちりと目を瞬かせた。
二つあるソファには、誰も居ない。
暫し座る者の居ないソファを見つめていた閃時だったが、興味を無くしたようにくるりと背を向けると、台所へと足を運んだ。



「ははうえ」



また小さく呟きながら台所に踏み込んだが、其処はもぬけの殻。
台所を横切って、厠の戸を開け、さらにその奥にある洗面所兼脱衣所。
浴室に繋がる戸を開けるが、誰も居ない。
それを確かめると、また台所を横切って廊下に出た。
それから、三階に繋がる階段を一段一段懸命に上がる。



「あねうえ、さだはる」



時折、踏み面に手を掛けながらも最後の一段を上り終わって三階に到着した閃時は、三度呟いて廊下に面している襖を順番に開けて行った。
呟きに答える声が無かったのは当然とばかりにどの部屋にも誰も居らず、日の光を反射しながら音も無く細かな埃が微かに舞っているだけだった。
その様子を黙って眺めていた閃時だったが、ペタペタと少し早い足音を立てながら階段に向かう。
閃時には少し高い手すりに、半ば両手でぶら下がるようにして階段を下りた。



「ちちうえ、ははうえ、あねうえ、さだはる」



最後の一段を無事下り切ると、直ぐ傍らの玄関に向かった。
敲きに並んでいるのは自分の小さな草履だけだと確認した閃時は、まるで呪文のように家族を呼ぶ。
しかし、誰一人としてそれに応える者は居なかった。
むむっと口唇を引き結んだ閃時は、ぎゅっと袴を握り締める。
そしてゆるゆると力を抜くと、今度はもっと強く握り締めた。
無意識なのか、小さな頭は垂れ下がっている。
また家族を呼ぼうとしたのか、それとも別の言葉を綴ろうとしたか、引き結ばれていた口唇が薄く開いたその時、カンカンっと微かな音が閃時の耳に飛び込んで来た。
一定のリズムを刻みながら上がって来る音に、はっと閃時は顔を上げる。
袴を握り締めていた手を解き、素足のまま敲きに閃時が下りると同時に、玄関の戸が外からガラリと開けられた。



「ったく、しょーもねぇ用事で呼びやがってあのバ・・・」



がしがしと頭を掻きながら、昼寝の最中に突如呼び出した階下のスナックお登勢の主への文句を綴っていた銀時は、最後まで言い切る事無く口を噤む。
原因は、何の前触れもなく右足に走った衝撃のせいだ。
ドンっとそれなりの質量にぶつかった様なそれに、玄関に何か置いてたか?と首を傾げつつ銀時は視線を落とした。
落とした視線の先には、自分と同じだけど大きさはまったく違う銀髪頭。



「おーもう目が覚めちまったか?閃時」



原因が眠っていると思っていた閃時に足にしがみ付かれた事だと理解すれば、あれこれ考える必要はないとばかりに、銀時はへらりと笑みを浮かべるとくしゃりと閃時の頭を撫でた。
撫でて、目を瞬かせる。
直ぐに離れると思っていた閃時が、足にしがみ付いたまま動かないのだ。



「閃時?どしたの?」



身を屈めて抱き上げようとする銀時だったが、さらにぎゅうっとしがみ付かれて困ったように頭を掻いた。
少し可哀想だなと思いながらも、銀時は閃時の細く柔い腕を掴むとゆるりと引き剥がす。
腕を掴んだまましゃがみ込んで閃時の顔を覗き込んだ銀時は、思わず目を丸くする。
覗き込んだ閃時は、声も無くただ大きな瞳からぽろぽろと涙を流していた。
ぽろぽろと零れる涙が、敲きにぽたりと落ちて染みを作った事で我に返った銀時は、あーっと妙な声を上げながら閃時を抱き上げる。
途端、今度は首にぎゅうっとしがみ付く閃時に、苦笑いながらそうだよなぁっと呟いた。



「目が覚めて誰も居なかったら、怖いわなぁー」



ごめんなぁっと申し訳なさそうに言葉を綴りながら、ぽんぽんっと背中を叩く。
片手で閃時の身体を支え、まだ開いたままだった玄関の戸を閉めると、サイドのチャックは上げずに足を突っ込んだだけであったブーツを、手も使わずに器用に脱いだ。
ぎゅうぎゅうっとしがみ付く閃時を背中を叩いてあやしつつ、居間に入る。



「父ちゃん何処にも行かねぇから、もう少しねんねしな」



じわりと肩口の辺りが濡れ始めた事に気付いたが、しがみ付かせたまま銀時はソファに腰を下ろした。
とんとんっと背中を叩きゆっくりと身体を揺らすと体温と背中を叩く手に安心したのか、銀時の首に巻き付いていた腕が緩む。
辛抱強く繰り返していると、力を無くした腕がするりと落ちた。
そっと顔を覗き込めば涙が流れた後はあるものの、眠りに落ちる前には止まっていたのか、寝顔は穏やかだ。
起こさないように注意しながら少し抱き上げると、向かい合わせの状態から膝に横に座らせて、左腕で背中を支える姿勢に変える。



「それにしても・・・泣くの下手くそだなぁおい」



三歳児何だから、もっとわぁわぁ声上げて泣いていいんだぞ?っと苦笑って、着流しの袖口で頬に残る涙の後を拭ってやった。



「どっちに似たんかねぇー泣くのが下手なのは」



そんな所は似なくていいんだっつーのっと笑いながら、銀時はふくふくと丸い閃時の頬を突付いた・・・。










END





両親のどっちに似ても、泣くのは下手そうだと思います(笑)
ってか、幼少時の長男は感情表現下手だといい!!(おい)
ちなみに、新年一発目は正月ネタを絡めた小説をと思ってたんですが、笑える位ネタが浮かばず、友人に何かネタないかーっと聞いたら。
正月ネタは思いつかないから、幼少時の長男泣かせばイイと言われました。
そして、それを決行する私は新年早々ドSと言われました。
お前が言ったんじゃねぇかぁあぁぁぁぁぁっ!!!(爆死)

2009.01.08




















065.小さな





男の子ですから。





そこそこ人通りのある歌舞伎町の大通りで、少年と呼ぶにはまだまだ年齢が足りない幼子が一人歩いていた。
迷子だろうかと思いもしたが、ポテポテとでも音がしそうなその足取りは迷いは無く、迷子特有の何処か怯えたような不安そうな表情を浮かべる訳でも無い。
目的地まで一生懸命歩いていますと言った様子に、やっぱりポテポテ歩く幼子に道行く人々は自然と和む。
が、路面に微妙な段差でもあったのか、ぐらりと小さな身体が揺らいだかと思うと、ビタンッと音を立ててその身体が地面とご対面した。
あっ!!周りから小さな声が上がり、近くに居た若いカップルが慌てて助け起こそうとしたのが、それよりも早くむくりと幼子は自力で起き上がる。
これは泣く!!と、周りが危惧したが・・・幼子はパチパチと二度瞬きしただけで泣く事は愚か、表情を歪ませる事も無く、パタパタと砂埃で汚れた着物と袴を叩いた。
大丈夫?と若いカップルが心配そうに尋ねれば、コクンと上下に振られた小さな頭。
気を付けてねと言葉を掛けられ、またコクンと頭が振られた。
大丈夫そうだと安心して、若いカップルが幼子に手を振って歩き出せば、幼子も小さく手を振り返す。
そのやり取りを見守って暫し止まっていた人々の時間が戻り、幼子はまたポテポテと歩き出す。
否、歩き出そうとした。
踏み出した足は空を踏むだけで、地面を蹴る事はない。
それも当然だ。猫の子よろしく襟首を掴まれて、吊り上げられていたのだから。
パタパタと四肢をバタつかせるが、どう頑張っても無駄だと悟ったのか、むむっと口唇をへの字に曲げて抵抗を止めた。
転んでも表情を変えなかった幼子の始めての表情の変化だ。
ポテポテと歩いていた幼子を突然襟首を掴んで吊り上げた男に、何事かと幾人かが立ち止まり怪訝そうな視線を向けたが、溜息混じりに零された男の言葉にあっさりと納得して何事も無かったように歩みを進める。



「急に居なくなったら父ちゃん吃驚するだろうが」



ホント勘弁して。父ちゃんマジで泣きそうになったからと呟いて、父親らしき男は深々と息を吐き出した。



「冒険はお仕舞い。帰ぇるぞ」



そう言って、幾らか乱暴で・・・でも慣れた様子で、幼子をそのまま頭上に持ち上げるとポスンと肩に落とす。
幼子はむむっと口唇をへの字に曲げたまま、小さな手を頭の上に置いた。
それは、日常の中に紛れた小さな冒険の幕切れ。










END





一緒に昼寝してて、こっそり抜け出したと思われます(笑)
2008.09.19





















068.幼子





ゆっくりゆっくり。





ぽてぽてぽて。
そんな擬音が似合いそうな歩き方に、思わず噴出しそうになるのを耐える。
視線をかくんと下に落とせば、腰より下辺りで俺と同じ銀色の中に一房黒が混じった頭がゆらゆら。
きゅっと俺の左手の人差し指と中指を一緒に握る力は、意外と強い。
俺の右手には買物帰りを示すように日用品の入ったビニール袋。



「疲れてねぇか?閃時」



相変わらずぽてぽてぽてと、一生懸命歩く幼い我が息子に声を掛ければ、くりくりと大きな左右色違いの瞳が見上げて来る。
もう一度疲れてねぇか?と問えば、コクンっと大きく頷いてまた歩く事に集中し出す。
平気だと頷いたけど、大分歩く速度は落ちていた。
我慢強い所は新八譲りだななんて思って、少しだけにやける。
でも、やっぱりまだまだ我慢なんかさせたくなくて・・・。



「なぁ、閃時」



ホンの少しだけ手を引いて立ち止まるように促すと、きょとりと目を瞬かせてまた見上げられた。
しゃがみ込んでもまだ俺の方が高い視線。



「父ちゃんさ。今すっげぇ閃時の事肩車してぇんだけど・・・させてくんねぇ?」



首を傾げて問えば、二度目を瞬かせて閃時はまだ握ったままだった俺の手・・・と言うよりは指に視線を向ける。
駄目?と重ねてお願いすると、ふるふると首を横に振って手を離した。
丸い大きな瞳で見詰められて、俺はにへっと笑うとくしゃくしゃと片手に収まる小さな頭を撫でる。
そのままくるりと半回転させて、脇の下に両手を差し込むとひょいっとばかりに持ち上げた。
持ち上げるには片手で十分な軽い身体を肩に乗せてゆっくりと立ち上がれば、ぽすりと小さな手が頭に乗せられる。
履いてる草履が脱げて落っこちないように、予め脱がしてビニール袋と一緒に右手で持つ。
さっきまで閃時と繋いでいた左手で、ちっこい左膝を掴んだ。



「落ちんなよ?」



落とすつもりはさらさらないけど、念の為声を掛ければ頭の上で頷く気配。
んじゃあ、帰るかぁと呟けば、もう一度頷いたのが分かった。
今度は俺のペースで歩き出す。
心成しか、肩に乗せた閃時は楽しそうだ。



「閃時、肩車好きか?」



何となく気になって聞いてみたら、頷く気配。
そりゃよかったと思わず笑う。



「おんなじ」
「ん?」
「ちちうえと、おんなじ」
「同じって?」
「たかさ」



だから、すき。と呟かれた。
それはあれですか、閃時君。
視界が高くなって、父ちゃんと同じ物が見えるから好きって事ですか。
やべぇってコレ。絶対ぇ今、ありえねぇ位ににやけてるから父ちゃん。

なぁ、閃時。
ゆっくりゆっくり大きくなってくれや。
まだまだ、父ちゃんの肩車で同じ高さが好きだと言っててよ。










END





長男は多分2〜3歳の間位じゃなかろうかと・・・。
2008.09.01




















069.





ぼけぇっとテレビを眺めてたら、ペタリと何かが手に触れた気がして何だと思いながら視線を向けた。
向けた視線の先には、何時の間にかソファによじ登っていた閃時が、ペタペタと俺の手を触る姿。



「どしたの?」



そろそろ昼寝の時間だろうにと思いながらも軽い身体を持ち上げて膝に乗せれば、『て』っと簡潔な言葉を紡がれた。
『て』って『手』か?と問いながら閃時の目の前でひらりと一回振るとコクンッと頷いたので、要望に応える為に左手を目の前に翳してやる。
そうしてやると紅葉みてぇな小さい手で、またペタペタと掌を触り始めた。
暫しそうやって、今度は自分の手をペタペタと触って、コトンっと首を傾げる。
うん、あれだよね。父ちゃんも首傾げていいかな、これ。



「どしたの?」



もう一度さっきと同じ問い掛けをすると、左右色違いのくりんっと大きな瞳が見上げて来た。



「ちちうえとせん、ちがう」
「違う?違うって何が?」
「ちちうえとははうえは、いっしょ。せんは、ちがう。なんで?」



通訳どこぉぉおおぉおぉおぉっ!?
思わずそう胸の内で叫びながら、いまいち理解不能な閃時の言葉を解読しようと試みる。
幼児ってあれだね。感覚でしゃべるから、ホント謎の言葉しゃべるよね。
とりあえず・・・違うって言いたいのは『手』の事だよなぁ・・・。
大きさの事か?でも、それだと俺と新八の手の大きさも大分違うから一緒って言うか?
思考を巡らせている内に、再び閃時の手でペタペタと手を触られていた事に気付いた。
良く見れば、閃時は掌全体を触ると言うよりは、指の付け根辺りを重点的にペタペタ触っている。
そう言う事かと何となく理解出来た。
小さい手を捕まえて手の平が上になるように引っ繰り返すと、親指の腹で指の付け根を押す。
おぉ・・・ぷにっぷにだな、おい。癒されるなぁ・・・。
って、違う違う。



「閃時、違うって此処の硬さが違うって事か?」



ぷにぷにと押しながら問えばコクンと頷いて、なんでちがうの?と言いたげに見上げられた。



「父ちゃんも母ちゃんも、ずっと剣を握って来たからなぁ。そうすっとな、此処が硬くなってくんだよ」



何度も何度も肉刺を作って肉刺を潰して硬くなった掌。
分かるか?と問えば、またコクンと頷く。



「せんも、なる?」
「そりゃ閃時の頑張り次第だな。ずっと剣を握って振ってりゃなるさ」



手と同じように小さい頭を撫でれば、きょとりと目を瞬かせた後、じぃっと自分の掌を見つめて・・・。



「せん、ちちうえとははうえと、いっしょがいい。がんばる」



と、ぽつりと呟いた。
くぱくぱと、手を開いて閉じてを繰り返すその手を、両手で包み込む。
小さくて柔らかく、そして穢れを知らない手は簡単に手の中に収まった。
俺の手は長い時間を掛けて新八が染み付いた血を拭い取ってくれたけど、一生その汚れは消える事はない。
どんだけ薄れても、薄れるだけで何もなかった頃には戻る事はないから。



「閃時はよぉ・・・母ちゃんと同じ手だけになれや」



新八の手だって、まったく血に濡れていない訳じゃないけど、俺と違って死を纏っていない。
敵だとしても、殺さずの剣だけを握って来た手。
あの手こそが、本当に守る手だ。



「父ちゃんと同じ手にだけは、なってくれんなや」
「どうして?」
「どうしてでも。父ちゃんのお願い」



意味が分からないとぷくりと頬を膨らませる閃時に、にへっと笑って一緒に昼寝すっかと声を掛けながら抱き上げて和室に向かう。
押入れから昼寝用のブランケットと座布団を二枚引っ張り出して畳の上に敷く。
その上に閃時を下ろせば、何かのスイッチでも入ったかのように直ぐにうとうととし始めた。
ブランケットを掛けて俺も隣に寝転がると、一定のリズムを付けながら軽く腹の辺りを叩いてやる。
そうしてやれば、ふぁっと欠伸を一つ零して閃時はすぅっと眠りに落ちた。
すぅすぅと穏やかな寝息を聞きながら、俺も目を閉じる。



例え、生涯剣を握る事を決めたとしても・・・その手に死を纏ってくれるな。



そう、願いながら・・・。










END





その手に死を纏う事の重さを知っているから願わずにはいられない。
きっと、長男は願いに応えてくれる筈。
似て非なる手を持つ両親に育てられてますからね。
ちっちゃい子の手をぷにぷにしたいです・・・(おまっ!)
2008.12.27