024.朝日
常ならば既に就寝している時刻、新八は敷いてある布団に身体を横にする事も出来ずに、布団の上で正座した状態で曖昧な相槌を打っていた。
ぴったりと寄り添うように敷かれたもう一組の布団の上には、胡坐を掻きその膝に分厚いアルバムを乗せ何事か熱く語る銀時の姿。
写真を指差してまた何かを語る銀時にまた一つ相槌を打ちつつ、まだ終わらないのかなぁ・・・と、新八はこっそりと溜息を吐いた。
「ホントさぁ〜この頃は、何をするにも『ちちうえ、ちちうえ』って、それこそ産まれたばっかの雛みたいにちょこちょこ着いて来てたのにさ?昼寝する時だって『ちちうえ、おひるね』つってさ?昼寝用のブランケット抱えて一緒に寝に来てたのにさ?最近はどうよ。ちょーっと人がソファで昼寝してたら『邪魔だ馬鹿親父』つって蹴り落としたりすんだよ!?酷くね!?コレ酷くね!?」
ってか、アンタの場合ちょっとじゃねぇだろうが。と言う言葉を飲み込んで、そーですねぇと新八は面倒臭そうに応える。
どうでもいいから早く寝たいと、欠伸を噛み殺した。
「アレだよね?好い加減、父親を敬うって事をがつんと教え込むべきだよね?」
「銀さん・・・閃時も思春期で結構難しい年頃なんですよ?そんな事したら余計に反発されるだけですから」
「んな事言ったってよぉ・・・。アレだね。ホント最近可愛気の欠片も無くなったね」
「何時までも可愛気だけで生きては行け無いんですよ。男の子なんですから」
「いやいや、新ちゃんがあの位の頃は可愛気の塊でしたから。銀さん常にキュンキュンしてましたから。むしろ、今もキュンキュンしてますから」
「銀さんキモイです。変なフィルター通して人を見るの好い加減止めて下さい」
やけに真剣な瞳で語る銀時を冷めた瞳で見返しつつ、新八はばっさりと切り捨てる。
銀時は聞こえているのか聞こえてないのか、さらに語り続けた。
「あーあー・・・ホント、何であんな風になっちまったのかねぇ〜。ほら、これ見てみ?父ちゃん大好きオーラ出てるよね?出捲くってるよね?」
「そーですねー出てますねー」
ほらほらと、アルバムに挟んである写真を一枚指差して同意を求めて来る銀時に、新八は視線を別の所へさ迷わせながら最早何度目か分からない相槌を適当に打つ。
「だろぉ?それなのになぁ・・・なんであーなっちまうかなぁ・・・っ」
がっくりと肩を落として声を震わせる姿に・・・とりあえず、アンタの生活態度を今すぐ省みろコノヤローと新八は思う。
それにしても眠い、眠過ぎる。
大分ぼんやりとし出した意識に同調するように、新八は緩慢な瞬きを繰り返した。
それでも、銀時の涙声で語る事は終わりそうにない。
噛み殺す事さえ放棄した欠伸を一つ零して、明日の朝日は目に染みるんだろうなと、今まで何度もこんな夜に零した溜息を今夜も諦めたように零した・・・。
END
坂田は、長男の成長具合に、隠していたアルバム引っ張り出して夜な夜な奥さんに語りながら泣いてるそうです(笑)
太門さーん!!奥さんはもう突っ込むのも疲れたみたいです!!
でも、ちゃんと話を聞いてくれるのでやっぱ同情は必要なさそうですよ(爆)
2008.12.27
037.あくび
布団からぬっと手を出して、アラームを響かせようとした目覚まし時計を止める。
本日も、目覚まし時計に勝利。
うーっと布団の中で唸った後、気合を入れて一気に起き上がった。
「寒っ!!」
一瞬でひんやりとした朝の空気に包まれて布団の中に戻りたい衝動に駆られたけど、ぐっと気合を入れてそれを堪える。
気合が萎えない内に立ち上がって、素早く寝巻きを脱いで枕元に置いていた着替えを纏った。
冷え切った服が肌に触れてぞわぞわと鳥肌が立つけど、それもぐっと我慢して廊下に出る。
隣の部屋でまだ寝ている蓮華を起こさないように静かに廊下を進んで、階下に下りた。
玄関の敲き部分が剥き出しのコンクリートのせいか、階段を下りた其処は一段と冷えていて、息を吐き出すと家の中にも係わらず白く霞んだ。
玄関を背にしながら廊下を進めば、台所から包丁でまな板を叩く音が聞こえる。
「おはよう母さん」
廊下から直接台所に入りながら朝食の支度に取り掛かっていた母さんに声を掛ければ、まだ眠そうな声でおはようと挨拶を返された。
その後、ふぁっと欠伸を一つ噛み殺す。
何時もだったら挨拶を交わした後、そのまま洗面所に向かって洗顔・歯磨きを済ますけど、その欠伸に一歩踏み出し掛けた足が止まった。
そんな俺に気付いた母さんが、不思議そうに首を傾げる。
こっちを向いた顔をまじまじと眺めると、薄っすらと目の下にクマが出来ていた。
眠そうなだけで何処かしんどそうと言う訳じゃない。
深く突っ込むの禁止な、頼むから。
・・・にも係わらず、こうも母さんが眠たそうと言う事は。
またやりやがったのかあの馬鹿親父!!
そう結論に達するが早いか、母さんの後ろを通って居間に入ってそのまま和室の襖を開け放つ。
くかぁーくかぁーっと幸せそうに高鼾を掻く親父に、ギラリと瞳を鋭くさせて・・・。
「アルバム何処に隠してやがんだ馬鹿親父がぁああぁぁぁぁっ!!!」
怒声と共に、問答無用の肘鉄を腹にめがけて叩き込んだ。
俺の人生の汚点を詰め込んだアルバムを、本日中に発掘して抹消すると心に決めて。
END
幼い頃のアルバムは、長男の人生の汚点(笑)
しかし、抹消しても抹消しても坂田の手によって復元されるそうです。
我が師匠、太門さんがそう言ってました!!!(おぃいぃぃいぃぃいぃっ!!)
2008.12.31