雑談的なお話しを此処で一つ。










偶にはこんな感じで穏やかにやってます・・・みたいな










朝飯の片付けを済ませた後、炊飯器に残っていた白飯を全部握り飯に変えてふっと小さく息を吐く。
最後の一個は微妙に残った飯を掻き集めて作ったからまさに一口サイズで、俺はそれを自分の口の中に放り込むと指付いてた米粒を舐め取って釜と手を洗った。
握り飯の表面が乾かないようにラップを掛ける。
一人分の昼飯には十分なりそうな量だ。



「台所に握り飯あるから、昼はそれ食えな親父」
「あー?オメェどっか行くのか?」



台所から居間に戻りながら声を掛ければ、早速と言わんばかりの様子でだらしなくソファに寝転んでジャンプを顔の前に掲げながら親父がそう問う。

とりあえず、朝飯で膨れているだろう腹に足を振り下ろしておいた。

が、避けられた。チッ!!



「何時もの依頼が入ってるから今から行って来る」



そんなんしたら、食ったもんが出るだろうが!!とか喚く親父はさくっと無視して、これからの予定を告げる。



「何時ものって・・・あぁ、和代ばぁさんのとこか。じゃあ、蓮華も一緒だな」
「そう言う事。終わったらそのまま伯母上の見舞い行って来る」
「お妙が倒れるたぁ・・・鬼の霍乱だよなぁ」
「しっかり伝えとくな、今の言葉」



ぽろりと弾みで零した親父の言葉をしっかり拾って笑顔で宣言すれば、さぁっと親父の顔面から血の気が引いた。



「いやいやいやいや閃時君。冗談だって分かってるよね?父ちゃんの可愛い冗談だって分かってくれてるよね?」
「悪いな親父。俺母さんに似て真面目だから冗談とか通じねぇから」
「ぅおぃぃいぃいぃぃぃいぃ!!黒いから!!!ものっそ黒い笑みだからそれ!!!」



慌てる親父の姿が面白くて、にたりと笑ってしまう。



「伯母上に、今の言葉密告されたくなかったら口止め料な」



ほれほれと親父の前に片手をひらつかせれば、チッと盛大に舌打ちした後、渋々と和室に向かった。
直ぐに居間に戻って来た親父は、右手に草臥れた財布を持っている。
ぶつぶつと何事か呟きながら親父は財布の中から千円札を一枚抜くと、ベシリと俺の手に叩きつけた。



「はい、毎度」
「くっそぉ・・・絶対ぇ言うなよオメェ」
「はいはい」
「はいは一回!!」



珍しく親らしい事を言う親父に、笑い声を喉の奥で押し殺しながら千円札を半分に折るとズボンの後ろポケットに捻じ込む。
この口止め料は、伯母上の見舞いの品に変わるのは親父も気付いてるだろう。
だから、素直に出した。
ったく・・・親父も心配してるなら心配してるで素直に言えば言い物を・・・。
イイ年こいたオッサンが天邪鬼のまんまっつうのはキモイんですが。



「兄様!!お着替え終わったので髪を結んで下さいなのです!!」



ちょうど良い所で着替えさせに行かせていた蓮華が戻って来たので、約束してた通りに髪を結んでやる。
長い髪を頭の両脇に少し高めに括って、お気に入りのリボンを結んでやれば、はい終了。
ツインテールは蓮華のお気に入りの髪型なので文句を言われる事も無い。



「ほら、出来た」
「ありがとうございますなのです」



ぽんっと軽く蓮華の頭に手を乗せれば、下から満面の笑顔で礼を言われて俺も自然と笑い返した。



「んじゃ親父、行って来るな」
「父様いってきますなのです」
「おー気ぃ付けて行って来いなぁ」



壁に立て掛けておいた刀袋に納めたままの模擬刀を取って声を掛ければ、間延びした声が返って来る。
まぁこれも何時もの事だと肩を竦めて、蓮華を促して家を出た。
屋敷・・・とまでは行かないが、一般家屋にすれば大きいと分類される和代ばぁちゃん家までは、蓮華の歩く速度に合わせても二十分程度。



「万事屋でーす」
「万事屋なのです!!」



市野と標識の掛けられた家のインターホンを鳴らして中に声を掛ければ、はいはーいっと返事が返って来た。



「おはよう。閃時君、蓮華ちゃん」
「おはようございます」
「おはようございますなのです」



玄関を開けてくれたのは、この家で住み込みで働く家政婦の笹野さん。
簡単に挨拶を交わすと、直ぐに中に通された。
住み込みで一人家政婦を雇う位の余裕はある家から、何故わざわざ万事屋に依頼が来るか。
答えは簡単。
俺達は遠方に住むんでる為、盆暮れ正月にしか訪れる事が無い和代ばぁちゃんの孫の代わりって事。
これは、和代ばぁちゃんからの依頼じゃなくて、その息子からの依頼。
週に二回、和代ばぁちゃんの家に遊びに行ってくれって言う。
毎月、決った額が振り込まれている。
ただ遊びに行くだけで金を貰うのも何だしと、蓮華と和代ばぁちゃんが遊んでる間、俺は切れた電球の交換をしたり、ペンキの剥げた壁やら柵やらの塗り直しをしたり、そこそこ広い庭の草を毟ったり、まぁ出来る範囲の事をしていた。



「おばぁちゃん。閃時君と蓮華ちゃんが来てくれましたよ」
「まぁまぁいらっしゃい。この時間だとおはようかしらねぇ」



笹野さんが案内してくれてのは、この家で一番日当たりの良い和代ばぁちゃんの自室。
縁側に面した障子を開けながら笹野さんが声を掛ければ、何処か嬉しそうな響きのある和代ばぁちゃんの声が出迎えてくれた。
最近は、年のせいで寝てる事が多くなったらしくて、和代ばぁちゃんは布団の上で身体を起こしているだけだ。



「おはよう。和代ばぁちゃん」
「おはようございますなのです。和代おばあちゃん」



皺くちゃの顔をさらに皺くちゃにして笑う和代ばぁちゃんに俺達も笑い返して、布団の傍らに腰を下ろす。
案内してくれた笹野さんが淹れてくれたお茶をゆっくりと飲みながら和代ばぁちゃんと幾らか雑談した後、蓮華を残して俺はと言うと、本日は草毟りに勤しむ。
つっても、ばぁちゃんの部屋から見える範囲だけなんだけどな。
この間、蓮華はあやとりやお手玉。
折り紙か何かを和代ばぁちゃんとして、時折楽しげな笑い声を上げている。
ある程度草毟りが終わる頃には、昼時になっていた。
笹野さんが用意してくれた昼飯を四人で食べて、和代ばぁちゃんは食後の薬を飲む。
薬が効き出して、和代ばぁちゃんがうつらうつらとし始めたら、俺達は帰り支度を整えるのが自然と決った流れだ。
挨拶を交わしてまた来ますと告げれば、和代ばぁちゃんは笑ってうんうんと頷いた。
偶には、こんな感じで穏やかにやってます。















後書き

ふっと浮かんだネタを、我慢出来ずにやってしまってすみませんil||li _| ̄|○ il||li
何かもぉ・・・コレ位しか言う事がないです(*゚▽゚)・∵. ガハ!
2008.09.16