それでいいんだよ。
狂 愛
ちぃーっす、坂田でーす。親父迎えに来ましたー。
あ、居た・・・。
まぁた酔い潰れやがってこのクソ親父は・・・大して強くもねぇ癖に。
おやっさんごめんなぁー。
おら、起きろ馬鹿親父!!帰んぞ!!!
・・・駄目だ。起きやしねぇ。
え?あー・・・そうだな、ちょっと待った方がいいか。
先に会計しとくよ。えーっと・・・はい、ちょうどな。
おやっさん、また親父色々愚痴った?あ、やっぱり。
ん?何で母さんじゃなくて俺が迎えに来たかって?
違う違う、愛想尽かして出て行ってたら万事屋に電話しても誰も出ないって!!
ほら、今日夏祭りだっただろ?
俺と親父、依頼があって行けなかったんだけど、母さんと妹、伯母上達と一緒に行っててさ。
祭り会場は実家の方が近いから、帰りそっち寄ったらしいんだけど妹がはしゃぎ疲れて寝ちゃったらしくて、今日は実家で泊まるって連絡あったんだ。
そしたら親父・・・拗ねやがったんだ。
鬱陶しいから飲みにでも行って来いって蹴り出した。
疲れてんのに親父の相手したくねぇし。
拗ねる位なら迎えに行くなりそっちで泊まりに行くなりすりゃあいいってのによ。
え?何?サービス?おやっさんありがとな!!!
ジュースってのが何だけど。
嘘々!冗談だって!!俺まだ未成年だから飲まないって!!!ありがたく頂きます。
あー・・・まぁ、ちょっとは。母さんには内緒にしといてな?
え?うーん・・・意外と強い方かも。
親父も母さんもそんな強くないんだけどな。
マイナス同士でプラスになったとか?
俺色々滅茶苦茶な遺伝してるし、ありえるんじゃねぇ?
そう言えば、親父何愚痴ってた?
何でって?あぁ、脅迫する為のネタになるかなぁって。
いやいや、親父は脅迫するネタ位握っとかないとダラダラゴロゴロばっかするしな。
ホント、いざって時しか煌かねぇしなぁーもー。
はぁ?愚痴じゃなくて家族自慢!?
何やってんだよこの馬鹿親父・・・恥ずかしいだろうが!!
・・・殴っても起きないってどんだけ飲みやがったんだよ、まったく。
で?どんな事話してた?
大半母さんの事だったんじゃね?
やっぱり・・・だろうと思ったよ。
結婚してどんだけ経ってんだと思ってんだこの親父は・・・。
えー?もう、ホントベタ惚れだよ親父は母さんに。
そうだな・・・こんな事言いたくは無いけど、母さんがもし親父より先に死ぬ様な事になったら一緒に死ぬ位に惚れてるよ。
いやいや、後追いとかじゃなくて!!
んな事したら、母さんにあの世でぶっ飛ばされるっての!!
なんつうか・・・あぁ、そうそう。魂の死ってヤツ。
飯食って寝て起きて呼吸して、見た目はちゃんと生きてるけど。
『坂田銀時』としての魂は死んじまうさ。
肉体と魂が揃って生きて初めて、人間は存在するだろ?
どっちか欠片たらもう本当に生きてるなんて言えねぇよ。
ん?姉さんや俺や妹が死んでもだって?
・・・いや、それだったら其処まではならねぇよ。
そりゃあ、悲しんではくれるだろうさ。
そんで、護れなかった自分を責めるな。
例えば、不慮の事故とかでどうしようもなくても。
責めて責めて責めて、多分見せねぇだろうけどボロボロになるまで泣くだろうな。
でも、死んだりはしねぇさ。
時間が掛かっても立ち直って、残った奴の事それまで以上に護るって決意すんだろうな。
それで過去にするよ、絶対な。
けど、母さんの場合だったら駄目だ。
母さんが死んだって認識した時点で、この世から坂田銀時は消える。
そんだけ惚れてんだよ、親父は母さんに。
・・・っと、変な話しになったな。わりぃおやっさん。
え?何だって?
ぶはっ!!おやっさん自分で言って何照れてんだよ!!こっちの方が恥ずかしいんだけど!!
あーうん、まぁ、愛されてねぇ訳じゃねぇよ。
むしろ、これでもかって位、愛情貰ってんだろうな。
矛盾してるって?
してねぇよ。俺等と母さんとじゃ種類が違うんだって。
俺達はその方がいいんだ。
俺達が死んでも、ちゃんと立ち直ってくれる位の愛情で。
うーん・・・説明すんのちょっと難しいんだけどさ。
俺等は無理なんだ。
そんなでかい愛情、抱え切れねぇんだよ。
それを全部丸ごと抱える事が出来るのは母さんだけだ。
・・・やっぱ説明すんの難しいな。
ってか、そろそろ帰るなおやっさん。
おらぁ帰るぞ親父。
ったく・・・重てぇんだよコノヤロー。
あー・・・おやっさん。分かり易い言葉見つけた。
母さんへの親父の愛てのは・・・。
狂愛。
・・・なんてな。
そんじゃ、ジュースご馳走様。
